事務局長談話

 
2022年12月19日
与党「令和5年度税制改正大綱」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.国民に寄り添い、国民の信頼を高める税制改革とは到底言い難く遺憾
 12月16日、自民・公明両党は「令和5年度税制改正大綱」(以下、「大綱」)を決定した。大綱は「足元では、新型コロナウイルス感染症、そして、原材料価格の上昇や円安の影響による物価高等に国民は苦しんでいる」と認識を示しながらも、低所得者の負担軽減や真に所得再分配機能の強化につながる施策は特段見当たらない。
 国民に寄り添い、国民の信頼を高める税制改革とは到底言い難く、遺憾である。

2.低所得者の負担軽減や所得格差是正に向けて、税による所得再分配機能の強化を
 大綱は、資産所得倍増に向けてNISA制度の抜本的拡充・恒久化を行う一方で、「今は投資の機会に恵まれない方については、賃上げ等を通じた所得の底上げが将来的な投資につながることも期待される」としている。さらに、贈与税における教育・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置も延長するとしている。これらの考えや措置は、所得格差の拡大や固定化を助長するものであり、容認できるものではない。
 また、国民の信頼を高め、より公平で中立的な税制に向けて、極めて高い水準の所得に最低限の負担を求める措置として、株式・土地の譲渡所得や給与・事業所得などを合算した課税の考え方が示されているが、除外される所得もあるなど、十分な効果が発揮されるのか疑問である。
 税による所得再分配機能を強化するためには、金融所得課税の強化に加えて、低所得者への負担軽減につながる「消費税還付制度」など「給付付き税額控除」の仕組みを導入すべきである。

3.わが国の構造課題解決に向けた税制の抜本改革こそ行うべき
 少子高齢化・人口減少や格差の拡大・貧困の固定化など、わが国が抱える構造課題は年々深刻さを増している。社会保障や教育、子ども・子育ての安定財源の確保は、将来不安の払しょくにつながる政策であり、責任ある財源議論を早期に開始すべきである。

4.連合は「公平・連帯・納得」の税制改革実現に総力をあげて取り組む
 また、大綱には、防衛力の強化とその財源確保策として増税の方向が示された。防衛力の強化は、国民の命とくらしに直結する重要課題であり、まずはその必要性と妥当性について国会や国民への説明があってしかるべきである。連合は、次期通常国会において、例年以上に徹底した審議を求めるとともに、政党や連合フォーラム議員と連携し、働く者・生活者の立場に立った「公平・連帯・納得」の税制改革実現に向けて取り組んでいく。

以 上