事務局長談話

 
2022年12月12日
民法等の一部を改正する法律案の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.子の人格の尊重や、女性の再婚禁止期間を撤廃する法改正の実現は評価
 12月10日、「民法等の一部を改正する法律案」が成立した。本法案は本年春の通常国会での成立が見込まれながら今臨時国会に持ち越され、前法務大臣の不適切発言により一時は成立も危ぶまれた。本法案の成立により、国連女性差別撤廃委員会から再三廃止の勧告を受けた女性の再婚禁止期間の撤廃や、子の人格の尊重や身分関係の安定をはかる主旨から、懲戒権の削除や嫡出制度の見直しが実現した点は評価する。

2.すべての子どもの権利擁護、児童虐待のない社会の実現に向け一歩前進
 保護者が「しつけ」と称して虐待を正当化する口実とされてきた懲戒権規定の削除と、子の監護・教育を行うにあたって「子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮しなければならない」とする規定の追加は、子の最善の利益の観点から大きな意義がある。そのうえで、「子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」とする規定の「健全な発達」の解釈によって、虐待が正当化されることがあってはならない。子ども一人ひとりの権利を守り、それぞれの特性に合った児童虐待のない子育てに関する啓発の強化が極めて重要である。

3.無戸籍者問題の根本的な解消のためには、政府の一層の努力が不可欠
 無戸籍者を生じる要因の一つである嫡出推定制度の見直しや、嫡出の否認権および否認の出訴期間の拡大は、連合が法制審議会民法(親子法制)部会で求めてきた内容に概ね沿うものである。また、再婚禁止期間の撤廃は女性のみが婚姻の制約を受ける状況の解消につながり、男女不平等法制の是正にも資する。一方で、女性が離婚後に再婚しないまま懐胎した場合、その子が当事者の意思に反して無戸籍の状態に置かれうる可能性は変わらず、今般の法改正を経てもなお課題が残る。無戸籍者問題の根本的な解消のためには、さらなる法改正を含め政府の一層の努力が不可欠である。

4.連合は法改正で積み残された課題の解消に向け、必要な検討や対応を求める
 本法案の附帯決議には、無戸籍の者が司法手続きを利用しやすくする支援や、行政サービスを利用するための関係機関の綿密な連携、懲戒権の削除に伴う体罰などの禁止を社会全体で認識し、共有するための周知徹底などが盛り込まれた。あわせて、法改正が無戸籍者問題の解消に資するものであるかを継続的に検証し、必要に応じて、嫡出推定制度などについてさらなる検討を行う必要性にも言及した。連合は、無戸籍者問題の根本的な解消に向け、今般の改正で積み残された課題に対する必要な検討や対応を求めていく。

以 上