事務局長談話

 
2022年12月02日
感染症法等改正法の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.感染症対策の強化は評価できるが、医療機関の減収補填財源については問題
 12月2日、感染症法等改正法案(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案)が参議院本会議で可決・成立した。本法案には、次の感染症発生時等における医療提供体制の整備に向け、協定締結医療機関に対する病床提供や外来診療の確保の義務付けや保健所の体制・機能の強化、感染症対策物資等の確保の強化などが盛り込まれたことは評価できる。一方で、医療機関の減収補填の仕組みの財源に保険料が充てられる点は問題である。

2.医療機関の減収補填は暫定措置であり、実施期間は必要最小限とすべき
 法案では、平時に都道府県等と初動対応等を含む特別な協定を締結した医療機関に対し、一般診療を制限して感染症医療を行うことに対し、減収相当分を補填する仕組み(流行初期医療確保措置)が盛り込まれた。その財源には公費だけでなく、保険料も充てられる。連合は、仕組みの必要性は理解するものの、診療実績がなくても負担が生じることや保険者機能を踏まえ、全額公費で賄うよう各審議会において求めるとともに、連合フォーラム議員と連携し国会での意見反映に取り組んだ。両院厚生労働委員会での附帯決議を踏まえ、同措置の実施期間は必要最小限とすべきである。

3.患者の声を踏まえた後遺症対策、現場を担う労働者のさらなる処遇改善が必要
 衆議院では、野党の対案を受けて与野党協議が行われた。その結果、新型コロナウイルス感染症の後遺症に関する医療のあり方や感染症法上の位置づけ、予防接種の有効性・安全性に関する情報公表について政府が必要な措置を講じる規定が政府案の附則に盛り込まれた。後遺症に苦しむ患者が増える中、患者の声も踏まえつつ、仕事と治療の両立支援策の検討が急がれる。また、医療機関や保健所などの現場では、長期にわたり緊迫した対応が続いている。病床や医薬品・医療機器などの確保に加え、人材の確保を含めた体制整備が不可欠である。人材の確保にあたっては、現場を担う労働者の働きに見合った処遇改善を行うべきである。

4.今後の新興感染症対応も見据えつつ、感染症対策の強化に向け取り組む
 2024年4月の法施行まで期間があることから、本法の趣旨を踏まえ、コロナ禍での教訓も活かしながら、感染症対策の取り組みを全体的に強化すべきであり、希望する者がワクチンを接種できるようにすることも重要である。今後の新興感染症等への対応も見据えつつ、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向け、連合は、構成組織・地方連合会、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」や被用者保険関係団体などと連携し、被保険者・患者・提供者の立場から、引き続き政策実現に取り組んでいく。

以 上