事務局長談話

 
2022年08月29日
核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議閉幕に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.NPT体制が大きく揺らぐ結果となったことは極めて遺憾
 ニューヨークの国際連合本部において開催されていた核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議は、8月26日(現地時間)、ロシアの反対により最終文書を採択できず閉幕した。前回2015年に続く2回連続の最終文書不採択は1970年の条約発効以来初めてであり、長年にわたり核軍縮・不拡散をめぐる議論の中核を担ってきたNPT体制が大きく揺らぐ結果となったことは極めて遺憾である。

2.核兵器保有国は国際社会に真摯に向き合い対話を進めるべき
 今次会議は、ロシアがウクライナに軍事侵攻し、条約の理念に反して核兵器の使用を示唆する発言を繰り返す中で始まった。最終文書案では、ロシアや核兵器保有国への配慮から、ウクライナのザポリージャ原子力発電所を占拠するロシアを名指しした表現や、いわゆる「核の先制不使用」政策の記述などが削除されたものの、全会一致での合意には至らなかった。核兵器保有国の政治的な思惑によってNPT体制が形骸化し、核兵器廃絶に向けた具体的な取り組みの進捗が阻まれてはならない。今こそ、核兵器保有国は国際社会に真摯に向き合い、将来を見据えた対話を進めるべきである。

3.日本政府には唯一の被爆国としての役割を果たすことを求める
 今次会議の冒頭、岸田首相は日本の首相として初めてNPT再検討会議に出席し、核兵器保有国に核戦力の透明化を促すなどの日本の行動計画を表明するとともに、NPT体制の維持・強化に向けて各国に建設的な対応を呼びかけた。しかし、核兵器保有国と非保有国の確執は解消されず、核兵器保有国間での対立も激化した。最終文書の不採択により核兵器廃絶の機運が退潮を強いられかねない中、日本政府は唯一の被爆国として、行動計画を早期に実行し、核兵器禁止条約の早期批准とNPT体制の維持・強化に向けた外交努力を重ねるべきである。

4.連合は核兵器廃絶のために引き続き取り組む
 連合は、今次会議に向け、原水禁、KAKKINの3団体で「核兵器廃絶1000万署名」に取り組み、824万筆超の署名を国際連合と日本政府に提出するなど、核兵器廃絶を求める強い意志を訴えてきた。また、連合2022「平和行動in広島」「平和行動in長崎」では、全国から多くの仲間が被爆地に集い、核兵器廃絶と恒久平和の実現に向けた取り組みを展開した。引き続き連合は、国際労働組合総連合(ITUC)と連携して核兵器の悲惨さを広く国際社会に発信すると同時に、関係団体・平和首長会議とともにあらゆる機会を通じて核兵器廃絶に対する国際社会の一致した行動を求めるなど、世論喚起の取り組みを進めていく。

以 上