事務局長談話

 
2022年07月19日
「これからの労働時間制度に関する検討会」報告に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.労働時間制度の考え方や裁量労働制の適正化などの方向性が示される
 7月15日、厚生労働省の「これからの労働時間制度に関する検討会」(座長:荒木尚志東京大学大学院教授)は、報告をとりまとめた。報告では、労働時間制度に関する基本的な考え方や裁量労働制の具体的対応の方向性が示された。労働時間制度は確実な健康確保が土台であるという基本的考え方や、裁量労働制の制度趣旨に沿った運用の見直し・改善に関する提言は、労働者保護につながるものと受け止める。一方で、裁量労働制の対象業務範囲の拡大については、長時間労働是正の流れに逆行するものであり、行うべきでない。

2.労働者の確実な健康確保を前提に、現行制度の適正運用を進めるべき
 報告は、労働者の健康確保を確実に行うべきことを強調し、時間外・休日労働の上限規制の着実な施行や、フレックスタイム制など柔軟な働き方の制度趣旨に沿った運用の必要性を指摘している。労使の働き方のニーズが変化する中においても、現行制度の適切な活用により多様な働き方は十分に可能である。報告にあるとおり、労働時間制度は、長時間労働の是正、労働者の健康確保を基本に据えるべきであり、労使協議などを通じて適正に運用される必要がある。

3.裁量労働制の対象業務の拡大は行うべきでない
 裁量労働制の運用の適正化について、報告では、健康・福祉確保措置の徹底・拡充、労使協議や労使委員会の実効性向上、健康被害が懸念される場合には適用を解除する措置などの対応策が示された。実質的に裁量がない働き方をしている者や、健康・福祉確保措置などの課題が顕在化する中、これらの対応策は労働者の健康保持、適切な裁量や相応しい処遇の確保に資するものと評価する。まずは、現行制度を適正に運用することが必要であり、安易な対象業務範囲の拡大は不要である。

4.すべての働く者の長時間労働の是正と健康確保の実現に向けて取り組む
 これまでも連合は、労働者の健康・安全の確保と生活時間保障を労働時間規制の基本としてきた。長時間労働を助長しかねない裁量労働制の対象業務の拡大は行うべきでないことを強く訴えるとともに、すべての働く者の長時間労働の是正と健康確保の実現に向け、労働者保護の観点からの労働時間規制の見直しが進むよう、全力で取り組む。

以 上