事務局長談話

 
2022年06月15日
第208通常国会閉会にあたっての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.総じて論戦は低調で、審議は深まらなかった
 6月15日、第208通常国会が閉会した。こども家庭庁設置法や改正児童福祉法、経済安全保障推進法が成立するとともに、ILO第105号条約の批准が承認されたことは評価できる。また、雇用保険法等改正法案には、立憲民主党、国民民主党の尽力により重要な附帯決議がついた。しかし、参議院選挙を控え、政府・与党が対決法案の提出を見送り法案数も絞ったとされる中、総じて論戦は低調だった。岸田総理が答弁で「検討」を多用し、野党も追及の決め手を欠いたことで審議は深まらなかった。

2.国債の増発はむしろ円安を助長。予備費肥大化は財政民主主義の観点から問題
 今国会は、当初はコロナ禍対応が最大の焦点と目されていたが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻により、物価高騰と外交・安全保障が大きく取り沙汰されることになった。3月22日には一般会計総額が過去最大の2022年度予算が戦後4番目の早さで成立し、5月31日には2.7兆円の補正予算が成立した。しかし、これらによる国債増発は金融緩和下ではむしろ円安を助長し、物価高騰対策の効果を減じかねない。予備費の肥大化も財政民主主義の観点から極めて問題であり、国会における審議を経て明瞭かつ公正に執行されるよう納税者・生活者の立場から強く要望する。

3.「新しい資本主義」の輪郭は明確にならず。社会課題の解決へ政治の転換を
 岸田総理は施政方針演説で「成長と分配の好循環による『新しい資本主義』」を掲げたが、その輪郭は明確にならず、積極財政と財政再建の間でも各党の主張が入り乱れている。財源の使いみちを民主的に決め、必要であれば苦しくても国民に負担を求めることが政治家の役割である。賃金が上がらない構造も、少子化も、社会課題の解決を自助努力や市場原理に委ね、雇用の質を劣化させ、また、社会全体で支え合う仕組みを十分に構築してこなかったことに原因がある。今こそ、従来の政治からの転換が求められる。早くから野党が主張してきたように、良質な雇用の創出と賃上げこそが最良の物価高騰対策であり、まっとうな経済政策である。連合として労使の責務を認識しつつ、引き続き政府に対し、価格転嫁、公正取引などの環境整備を求めていく。

4.来たる参議院選挙、働く者・生活者の立場に立つ政治の実現に全力を尽くす
 間もなく参議院選挙が執行される。その後3年間は国政選挙がないと言われる中、この先の日本の政治の方向性を決める極めて重要な闘いである。各党・候補者には、めざすべき国のあり方を堂々と示したうえで、本質的な論戦を期待したい。連合は、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて、推薦候補者全員の当選を果たすべく、構成組織・地方連合会と一体となって700万組合員に行動を呼びかけていく。

以 上