事務局長談話

 
2022年06月07日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.政府は、財政健全化への覚悟を示すべき
 6月7日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2022」を閣議決定した。方針では「新しい資本主義」実現に向けた重点分野への投資や、中長期の経済財政運営の方向性などは示されたが、基礎的財政収支黒字化達成の目標年度は明記されなかった。超少子高齢化・人口減少社会にある我が国において、これ以上の将来世代への負担の先送りは許されず、政府の責任において、財政健全化を果たす覚悟を示すべきである。

2.「人への投資」の実効性を担保することが重要
 方針では、「人への投資」を抜本的に強化する強い意志が示されたが、必ずこれを実現しなければならない。特に、中堅・中小企業労働者の処遇改善には、企業規模間格差の是正が必須であり、「取引の適正化」などについて実効性を高める必要がある。なお、労働条件は労使で決定していくものであり、政府は、継続した賃上げを通じて実質賃金を維持・向上させていくことの重要性を社会の共通認識とし、賃上げしやすい環境整備に力を尽くすべきである。
 女性の経済的自立の実現に向けては、男女間賃金格差の開示義務付け、非正規雇用労働者の待遇改善、女性の視点も踏まえた社会保障制度や税制等の検討など評価できる点も盛り込まれており、各施策の実現に向けて早急に着手すべきである。
 また、雇用形態に関わらず、すべての労働者に対する能力開発や職業訓練への投資も重要であり、社会が変化する中でも、キャリア形成の促進を通じて「安定的な雇用」が維持される仕組みの支援強化が必要である。なお、リカレント教育は、労働者自らが選択したスキル・キャリア向上を支援することが重要であり、副業・兼業を含め、労働者本人が望まぬ対応を促すものではない。労使議論による環境整備を進めつつ、多様な教育プログラムの設定に向け、省庁横断的な取り組みが求められる。

3.全世代に向けた社会保障制度の検討をさらに深めるべき
 全世代支援型社会保障や包摂社会の構築は、すべての働く者・生活者が地域で安心してくらし働き続けられるよう、関係する審議会等でさらに検討を深める必要がある。
 なお、公的年金等の長期運用資金は、専ら被保険者や受益者のための資金であり、かつ労使自治が前提であるため、スタートアップに循環する流れの形成は検討すべきではない。

4.「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け全力で取り組む
 連合は、真に持続可能性と包摂性の確保に資する施策への財源投入を強く求めるなど「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて、引き続き全力で取り組んでいく。

以 上