事務局長談話

 
2022年03月30日
「多様化する労働契約のルールに関する検討会」報告に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.無期転換ルールの活用と「多様な正社員」に関する見直しの方向性が示される
 3月30日、厚生労働省の「多様化する労働契約のルールに関する検討会」(座長:山川隆一東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、報告書をとりまとめ、公表した。検討会では、改正労働契約法の附則にもとづき、「無期転換ルール」および「多様な正社員」に関する労働契約の明確化の検討を行ってきた。報告書は、無期転換申込機会の通知や労働条件の書面明示事項拡充などについて一定の方向性を示す一方、無期転換労働者の処遇改善や使用者による制度の濫用防止などの具体策が示されなかったのは残念である。

2.雇止めやクーリング期間の濫用防止と無期転換労働者の処遇改善は必須の課題
 「無期転換ルール」については、調査結果を踏まえ、無期転換申込権が発生する契約更新ごとの申込機会の通知や、更新上限の有無などについて明示を義務づけるべきことなどが示された。無期転換前の雇止めやクーリング期間の濫用的利用防止のために、法や裁判例等の積極的な周知は重要だが、さらなる対策を講じていく必要がある。また、現行法制では、無期転換に際して労働条件の改善は必要なく、結果として無期転換労働者の処遇改善が進展しないという問題は依然として残っている。労働者が安心して働き続けるためには、雇用の安定と処遇改善にかかる取り組みは必須である。

3.多様な働き方の実現には働き方改革の推進や既存制度の利用促進が重要
 「多様な正社員」については、制度の普及を念頭に、労基法15条の労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加することなどが示された。労働条件の書面明示事項の拡充は労働者にとって意義があるが、労働条件明示を法規定することにより、勤務地の閉鎖などにより解雇が促進される等の影響も懸念される。多様な働き方実現のためには、長時間労働是正など働き方改革の推進や、テレワークをはじめとする柔軟な働き方に関する制度の適正な運用や活用促進こそ先決である。

4.すべての働く者の雇用の安定と公正な処遇の実現に向けて取り組む
 無期転換ルールの適正な運用や多様な働き方実現のため、労働組合は労使協議などを通じて労使自治の中で取り組んできた。こうした取り組みを踏まえると、集団的労使関係の構築・強化と労使コミュニケーションの一層の促進こそが重要である。連合は、有期契約労働者をはじめ、すべての働く者の雇用の安定と公正な処遇の実現に向け、審議会等を通じて、労働者保護の観点から無期転換ルールの見直しや雇用形態に関わらない均等・均衡待遇の実現に資する法改正等を求めていく。

以 上