2022年02月09日
「民法(親子法制)の改正に関する要綱案」に対する談話
1.子の人格の尊重、身分関係の安定化をはかる方向性は評価
2月1日、法制審議会民法(親子法制)部会(部会長:大村敦志学習院大学大学院教授)は、「民法(親子法制)の改正に関する要綱案」を確認した。要綱案は、①懲戒権の見直し、②嫡出の推定の見直しおよび女性の再婚禁止期間の撤廃、③嫡出否認制度の見直し、④第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係に関する特例の見直し、⑤認知制度の見直し、からなる。要綱案は、子の人格の尊重や身分関係の安定化をはかる主旨によるものであり、その方向性は評価できる。
2.児童虐待防止に向け、体罰のない子育ての啓発強化を
懲戒権規定は、保護者が「しつけ」と称して虐待を正当化する口実とされてきたため、連合は、本規定の見直しと子どもに対する体罰禁止の法制化を求めてきた。今回、懲戒権規定の削除と、子の監護・教育を行うにあたって「子の人格を尊重するとともに、子の年齢および発達の程度に配慮しなければならない」とする規定の追加は、子の最善の利益の観点からも大きな意義がある。しかし、「子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない」とする規定は、「健全な発達」の解釈によって虐待が正当化されかねず、児童虐待の防止に向けた啓発の強化が極めて重要である。
3.女性の再婚禁止期間の撤廃は、民法上の男女不平等を是正するもの
嫡出推定制度は、無戸籍者を生じる要因の一つになっており、連合は現行規定の見直しや女性の再婚禁止期間の撤廃を求めてきた。嫡出否認制度の見直しでは、子や母への否認権の拡大や、否認権者の拡大に伴う権利行使の機会が十分確保されるよう、父による嫡出否認の訴えの出訴期間を現行の1年から3年に延長、子や母には規定の創設を認める方向で議論に参画してきた。部会での丁寧な議論の結果、要綱案は連合の考え方に概ね沿う内容となり、特に再婚禁止期間の撤廃は女性のみが婚姻の制約を受ける状況の解消につながり、男女不平等法制の是正に資するものである。
4.連合は改正案の早期成立とともに、残る論点も必要に応じて検討を求める
政府には、法制審議会総会から法務大臣への答申後、速やかに改正法案を国会に提出することを求める。連合は、改正法案の早期成立および子どもの人権擁護の実効性の確保を含め幅広い論点での議論を求めていく。また、当部会では取り扱わないこととされた、家庭内暴力による別居を理由に、夫の子でない出生の事実を知られたくないような場合、戸籍窓口で出生の届出を許容する方策などの論点について、引き続き無戸籍者を生じさせない観点で検討が行われるよう、議論の動向を注視していく。
以 上