事務局長談話

 
2022年01月07日
「雇用保険部会報告」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.雇用政策の担い手としての政府の責任を示すべき
 1月7日、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(部会長:守島基博・学習院大学経済学部経営学科教授、一橋大学名誉教授)は、「雇用保険部会報告」を大筋で取りまとめた。失業等給付にかかる国庫負担割合については、雇用情勢および雇用保険の財政状況が悪化している場合にのみ本則と同じ1/4とし、それ以外の場合には1/40とする見直しが示された。これは、雇用保険制度運営に関する最終的な意思決定機関である雇用保険部会における本則復帰を求める意見を踏まえていないものであり、雇用政策の担い手としての政府の責任を果たしたものとは言えず、極めて遺憾である。

2.雇用保険料の引き上げは半年間の先送りとされた
 「報告」の主な内容は、(1)基本手当の暫定措置と教育訓練支援給付金の3年間継続、(2)求職者支援制度にかかる特例措置の次年度継続、(3)休業支援金の次年度継続、(4)国庫負担割合の見直し、(5)求職者支援制度にかかる国庫負担割合の時限的引き下げの終了などである。
 雇止めによる離職者の基本手当給付日数を延長する措置が継続されることは評価できるものの、効果検証に基づく各給付の制度改善の議論については先送りとなった。また、失業等給付にかかる雇用保険料率については、新型コロナウイルス感染症の経済への影響や労使の負担感も踏まえ、2022年度に限り、2022年4月~9月は現行どおり0.2%、10月~2023年3月は0.6%に引き上げることとされた。

3.安定した財源確保に向け、早急に国庫負担割合を本則に戻すべき
 一般会計からの繰り入れについては、国庫負担割合を見直したうえで、新たに雇用情勢および雇用保険財政の状況に応じて国庫からの繰入を可能とする制度が設けられた。しかし、その要件が明確ではなく、機動性・実効性が担保されない以上、見直しは容認できるものではない。国庫負担には政府の雇用政策に対する責任を明確にする意義があり、過去の部会報告や衆参厚生労働委員会の附帯決議なども踏まえれば、1/40まで引き下げられている国庫負担割合を早急に本則に戻すべきである。

4.連合は雇用保険の安定運営を通じた労働者保護に引き続き全力で取り組む
 今後、「報告」にもとづき、次期通常国会に法案が提出されることになる。連合は、法案審議において、財政面も含め「雇用政策に対する役割」を政府が十分に発揮することや、雇用のセーフティネットである雇用保険が将来にわたり安定的に運営されることを政府・政党への働きかけを行うとともに、支援を必要とする労働者が保護されるよう、引き続き全力で取り組んでいく。

以 上