事務局長談話

 
2021年06月24日
夫婦同姓規定に関する最高裁決定に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.社会情勢の変化を踏まえていない判断は極めて遺憾
 6月23日、最高裁判所大法廷は、民法および戸籍法の夫婦同姓規定は合憲とする判断を下した。2015年の合憲判断以降、選択的夫婦別氏制度への国民の理解は進み、この間の国政選挙では複数政党が制度導入を公約に掲げるなど、社会情勢は確実に変化している。今回の判決はこうした民意の高まりを踏まえておらず、極めて遺憾である。

2.夫婦同姓規定は個人の尊厳に関わる問題であり、見直すべき
 結婚により姓を変更しているのは96%が女性であり、仕事や生活面での不利益や不便は女性に著しく偏っている。職場での旧姓の通称使用を認めたり、旧姓併記できる公的書類の範囲を拡大する動きもあるが、個人の尊厳に関わる問題であり、根本的な解決策にはなり得ない。夫婦同姓規定をそのままにしておくことは、男女の不平等な状態の放置を意味する。そもそも結婚後も自らの姓を名乗れるかどうかは、人権に関わる問題であり、一方に望まない改姓を現実的に強いている規定は、見直すべきである。

3.政府と国会は国内の人権問題に向き合い、選択的夫婦別氏制度を導入すべき
 1996年に法制審議会が選択的夫婦別氏制度導入を答申してからすでに25年の月日が経過した。連合は、この間、重点政策要請や関係団体との連携のもと民法改正を求める請願署名などに取り組んできた。その集約数が過去最多を更新するなど、国民的運動が高まりを見せているにもかかわらず、過日閉会した国会でも法制化は見送られた。日本は法律で夫婦同姓を義務づけている唯一の国として国際的な潮流にも後れをとっている。政府は、国際社会で言論の自由や少数民族への弾圧などに関して人権擁護の姿勢を積極的に発信しているが、国内の人権問題に真剣に向き合うべきである。また、2015年の最高裁判決に引き続き、改めて議論を促された国会は早期に立法措置を講ずるべきである。

4.多様な家族のあり方やライフスタイルを認め合う社会の実現に取り組む
 選択的夫婦別氏制度は、夫婦同姓やそれを望む人たちを排除するものではなく、すべての人が自らの選択のもと、平等に利益を享受でき、かつ誰にも損失をもたらさない制度である。連合は、今後も政府・政党への要請等を通じて選択的夫婦別氏制度の一刻も早い導入を求めていく。また、税や社会保障も含め、残存する男女不平等な法制度や社会慣行の解消をはかり、多様な家族のあり方やライフスタイルを認め合う社会の実現に向けて、引き続き強力に運動を展開していく。

以 上