事務局長談話

 
2021年06月09日
ILO第105号条約締結のための整備法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.条約批准に向けた大きな前進を評価するとともに関係者の努力に敬意を表する
 「強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結のための関係法律の整備に関する法律案」(以下、「法案」)が6月9日、参議院本会議において可決・成立した。この法案は議員立法として、ILO活動推進議員連盟を中心とする与野党有志議員により提出された。法案成立に至る過程に関わったすべての方々に心から敬意を表する。ILO第105号条約は、1957年に採択されたILO加盟国すべてが批准を求められる「中核的労働基準8条約」の1つであり、加盟187ヵ国中176ヵ国が批准している。しかし、日本はILO創設時からの原加盟国であるにもかかわらず、長年、未批准という不名誉な状態にあった。法案成立は条約批准に向けた大きな前進として評価する。

2.刑罰のあり方には課題が残るが早期批准をめざす立法府の意思を理解
 法案では、条約が禁止する強制労働にあたると解釈される[1]国家公務員による一定の政治的行為、[2]一定の業務に従事する者の労働規律違反、[3]公務員の争議行為のあおり等に対して、制裁として定められている懲役刑を禁錮刑に変更した。公務員法制における刑罰のあり方や、一部の不可欠業務の労働規律違反に対する懲役罰が依然として残るという課題はあるものの、一刻も早く条約批准を実現させるべきとの立法府の意思として受け止める。

3.人権の尊重・保護に対する国内外の認識強化が機運の醸成に寄与
 2011年、国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されるなど、人権の尊重・保護に関する認識は国内外で急速に高まってきている。これらを背景に、日・EU経済連携協定をはじめ、貿易・投資関係の国際協定では中核的労働基準に言及することが定着し、日本でも「ビジネスと人権に関する行動計画」が策定された。経済界においてもビジネスの展開上、中核的労働基準の批准の重要性を指摘する声が挙げられるなど、国内外の環境変化により機運が高まり、法案成立につながった。

4.第111号条約の批准も早期に達成すべき
 2019年6月の衆参両院における「ILO創設100周年決議」に「基本条約の批准に向けた引き続きの努力」が盛り込まれたことも踏まえ、連合は、本部内に「ILO中核条約批准促進チーム」を設置し、国会議員要請をはじめ国内外にわたり取り組みを進めてきた。日本を差別や人権の軽視を許さない国としていくためにも、とりわけ「中核的労働基準8条約」で唯一の未批准となる第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))の早期批准に向けて、引き続き取り組みを強化していく。

以 上