事務局長談話

 
2021年06月04日
医療制度改革関連法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.年齢から支払能力に応じた負担への転換と前向きに受け止める
 医療制度改革関連法案(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)が6月4日、参議院本会議で可決・成立した。一定所得以上の75歳以上高齢者の窓口負担割合が2割に引き上げられることとなる。長期頻回受診患者等に対する負担軽減が講じられることを前提に、年齢ではなく支払能力に応じた負担に転換する観点から、前向きに受け止める。

2.窓口負担引き上げによる受診抑制等の検証と配慮措置の確実な周知を
 後期高齢者の窓口負担の引き上げが、対象者の受診抑制や症状の重篤化などにつながるとの懸念は、国会審議では十分に払拭されなかった。また、長期頻回受診患者等への配慮措置の適用は、複数医療機関を受診している場合、患者自身による手続きが必要であり、丁寧かつ確実な周知が欠かせない。新型コロナウイルス感染症の長期化による影響も含め、今回の見直しによる被保険者、患者、医療機関等への影響や対象者の受診行動の変化を検証するための具体的方法を確立したうえで、一定所得の基準の妥当性や配慮措置の継続などについて検討していくべきである。

3.保険者による情報管理体制の構築と適正利用を
 法改正により、事業主には、保険者に対する労働者の健診情報の提供義務が課せられる。そのため、保険者にはこれまで以上に多くの機微情報が集積されることとなる。健診情報は受診者本人のものであり、要配慮個人情報であることを踏まえるとともに、個人情報流出の不安を払拭するためにも、保険者には委託先を含め厳格な情報管理と適正な利用が求められる。また、集約したデータを受診者に対する保健指導の効果的な実施や予防・健康づくりの強化など、保険者機能がより発揮されるように、体制整備や人材育成を含め、健保財政の改善につながる国による支援が必要である。

4.将来にわたる安心と信頼の医療の確保に向け取り組む
 人口減少・超少子高齢化が進行する中、すべての人が将来にわたり安心して良質な医療を受けられる体制を確保していくには、国民皆保険の堅持と医療従事者の働き方改革、あらゆる設置主体の参画による地域医療構想の実現とともに、保健や受診に関する私たち一人ひとりの行動が非常に重要となる。連合は、構成組織・地方連合会、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」や被用者保険関係団体などと連携し、将来にわたって安心と信頼の医療が確保されるよう、被保険者・患者・提供者の立場から政策実現に取り組んでいく。

以 上