事務局長談話

 
2021年05月21日
医師の働き方改革関連法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.良質で効率的な医療提供体制の構築に向けて一歩前進
 医師の働き方改革関連法案(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案)が5月21日、参議院本会議で与党などの賛成多数により可決・成立した。長時間労働を余儀なくされた医師に対し、医療機関が講ずべき追加的健康確保措置等の整備を含む医師の働き方改革や、地域医療構想の実現に向けた医療機関の取り組みに対する支援強化などが盛り込まれた。地域の実情に応じた良質で効率的な医療提供体制の構築に向けて一歩前進したものと受け止める。

2.法の実効性を確保し「医師の働き方改革」の推進を
 本法案により、長時間労働の医師に対する追加的健康確保措置の義務化などの枠組みが整備される。一方、指定医療機関に一般則を上回る時間外労働の特例水準が適用されるが、調査などを通じて実態と課題を把握し、2035年度末までの期限を待たず早期に解消すべきである。また、改革を推進するためには法の実効性の確保が重要である。各医療機関が課題を把握し、医師をはじめとする医療現場で働く者全体の労働時間短縮の取り組みを前進させるためには、PDCAサイクルの構築を早急に進めるとともに都道府県による支援の強化が必要である。

3.あらゆる設置主体の参画による地域医療構想の再検討を
 今回の改正では、都道府県医療計画の中に「新興感染症等の感染拡大時における医療」が追加されたほか、病床機能再編を行う医療機関に対する財政支援の強化と税制優遇が盛り込まれた。感染症対応を考慮しつつ、外来を含めあらゆる設置主体の医療機関の参画による地域医療構想を再検討することが求められる。そのため国は都道府県の取り組みを強力に支援するとともに、雇用問題が生じないようにする必要がある。また都道府県は、地域医療構想調整会議の透明性を高めるとともに、地域医療提供体制の構築にあたって被保険者や住民の参画を促進すべきである。

4.誰もが住みなれた地域で安心して暮らし続けられる社会の実現を
 コロナ対応の長期化で、医療現場で働く者には肉体的・精神的負担が重くのしかかっている。他方、中長期的には、人口減少・超少子高齢化に伴い人材や財源が限られる中、良質で効率的な医療提供体制の構築は欠かせない。連合は、「医師の働き方改革」の実行状況の確認と推進に向けた対応をはかるとともに、被保険者・患者・労働者の立場で、誰もが住みなれた地域で安心して暮らし続けられるよう、患者本位で良質な医療を切れ目なく受けられる提供体制の構築を引き続き求めていく。

以 上