事務局長談話

 
2021年03月26日
2021年度税制改正関連法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.議論が深まらないまま成立に至ったことは残念
 3月26日、「所得税法等の一部を改正する法律案」をはじめとする税制改正関連法案が、参議院本会議において与党などの賛成多数で可決・成立した。本法案には、コロナ禍において社会・経済・産業の不確実性が増す中、研究開発税制の拡充をはじめイノベーション促進に向けた措置などが盛り込まれた。しかし、with/afterコロナ社会を見据えた、持続可能で包摂的な社会の構築に向けた抜本改革についての議論が深まらないまま、成立に至ったことは残念である。

2.コロナ禍を機に所得再分配機能と財源調達機能の強化に向けた議論の深掘りを
 コロナ禍により貧困の固定化と格差の拡大が一層進む中、税による所得再分配機能の強化は喫緊の課題である。検討課題とされながら毎年見送られている金融所得課税の強化や、所得税の人的控除の見直しなど各種改革を進めるべきである。また、人口減少・超少子高齢化の進展による社会保障給付費の増大に加え、各種コロナ対応における巨額の国債発行によりさらに深刻化している財政の状況を踏まえると、財源調達機能の回復・強化も重要課題である。小手先の弥縫策に終始することなく、将来世代への負担の付け回しに歯止めをかけ、国民のくらしと将来の希望に向けた議論の深掘りが求められる。

3.セーフティネットの構築にも資する「給付付き税額控除」の導入を
 連合はこの間、真に効果的・効率的な低所得者対策として「給付付き税額控除」の導入を訴えてきた。今般のコロナ禍が、わが国のセーフティネットの脆弱性を改めて浮き彫りにしたことを踏まえると、真に必要とする層に迅速かつ適切な支援を行うことができるインフラの整備は不可欠であり、そうした仕組みの構築にも資する本制度を早急に導入すべきである。また、制度の前提となる適切な所得捕捉の実現に向け、預貯金口座との紐付けをはじめとするマイナンバー制度のさらなる活用など、「デジタル改革関連法案」の審議における積極的な論議を期待したい。

4.連合は「公平・連帯・納得」の税制改革実現に向けて取り組む
 「働くことを軸とする安心社会」を実現する基盤として、デジタル化や脱炭素社会の推進による産業構造の転換やwith/afterコロナ社会における不確実性への備え、働き方やライフスタイルなどにおける多様化する価値観への対応など、「公平・連帯・納得」の税制改革が今、求められる。
 そのために、連合は引き続き、政府・政党への要請、政府税制調査会での意見反映、連合フォーラム議員との連携などに取り組んでいく。

以 上