事務局長談話

 
2021年01月18日
2021年度介護報酬改定に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.長期化するコロナ禍による介護従事者の負担増加を顧みない報酬改定
 社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長:田中滋埼玉県立大学理事長)は1月18日、2021年度介護報酬改定に関する厚生労働大臣の諮問に対し、答申を行った。改定率は、政府予算編成においてわずかながら0.7%のプラス改定とされたが、長期化するコロナ禍の中で人材確保が厳しさを増しているにもかかわらず、介護職員のさらなる処遇改善を行うことなく、人員配置基準の緩和や職員の兼務をさらに進め業務負担を増やす改定内容となったことは、極めて遺憾である。

2.安全やケアの質、業務負担の軽減の実効性確保と検証が不可欠
 介護保険施設等における見守りセンサーなどのテクノロジーの活用について、連合は分科会において、介護従事者の業務負担を軽減するべく導入促進を強く求めてきた。ところが、機器の導入による効率化相当分は、その大部分について夜間人員配置基準などを引き下げることとされ、介護従事者の業務負担の増加とサービスの質の低下、介護人材確保への悪影響が懸念される。利用者の安全やケアの質、休憩時間の確保などを導入事業所の職場の夜勤職員も参画する委員会において確認する仕組みも、その実効性には懸念が大きい。改定後は都道府県等による指導監査等を行うとともに、国において適宜実施状況を検証・把握し、次期改定を待たずして必要な改善を行うべきである。

3.賃金格差是正に向けたさらなる処遇改善措置と人材確保を急ぐべき
 介護職員は、利用者との接触機会が必然的に多い中、感染リスクやいわれなき差別などにさらされながら、エッセンシャルワーカーとして、いのちや健康を守るため懸命に働いている。コロナ禍の長期化により、介護現場で働く者には肉体的・精神的負担が日々重くのしかかっており、連合調査によれば人材確保にも悪影響が出ている。介護現場を支えるのは人材以外にありえず、高齢化の急速な進展も見据え、全産業平均との賃金格差是正と確実な人材確保が急務である。

4.だれもが住み慣れた地域で安心してくらし続けられる社会づくりに取り組む
 老々介護、独居高齢者、認知症の増加、介護と仕事の両立推進と「介護離職ゼロ」の実現、介護保険制度の持続可能性の確保など、私たちは難しい課題に直面している。連合は、介護が必要となっても住み慣れた地域で自分らしい尊厳あるくらしをだれもが続けられるよう、必要な介護サービスを将来にわたって確実に利用し続けられる介護保険制度とサービス提供体制の確立、人材確保のための処遇改善の実現に向け、引き続き政府・政党への意見反映などの取り組みを進めていく。

以 上