事務局長談話

 
2020年12月23日
社会保障審議会医療保険部会における「議論の整理」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.負担能力に応じた医療保険制度の構築に向けて一歩前進
 社会保障審議会医療保険部会(部会長:遠藤久夫学習院大学教授)は、12月23日、「議論の整理」を取りまとめた。75歳以上の後期高齢者のうち、所得が一定以上の場合に窓口負担割合が2割に引き上げられ、長期頻回受診患者等に対する配慮措置が示された。年齢ではなく支払能力に応じた負担への転換をすすめることは、前向きに受け止める。また、紹介状なしで大病院を受診する場合の窓口負担額の増額などが盛り込まれたことは、外来医療の機能分化と医療従事者の働き方改革を促進するものとして、概ね評価する。

2.窓口負担見直しによる影響の検証と必要な施策の検討を
 後期高齢者の窓口負担の引き上げにあたり、配慮措置が導入されるものの、年間最大3.6万円の負担増となり、日常生活への支障や、受診控えによる健康悪化などの懸念も残る。今回の見直しによる被保険者、患者、医療機関等への影響を検証したうえで、一定所得の基準の妥当性や配慮措置の継続等について検討していくべきである。
 また、紹介状なしで大病院を受診する場合の初診・再診についても、患者の窓口負担が増えることとなるため、医療アクセスの過度な制限につながらないよう配慮が必要である。保険給付範囲を狭め、窓口負担額を増額するとの考え方も示されているが、公的医療保険の7割給付原則の堅持を前提に、中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的に検討すべきである。

3.希望する人が安心して子どもを生み、育てることができる環境整備を
 不妊治療の保険適用、育児休業中の社会保険料免除、出産育児一時金の本人給付分引き上げなどが盛り込まれた。希望する人が安心して子どもを生み、育てることができる環境整備は少子化対策にもつながることから、正常分娩も含めてすべて健康保険の適用(現物給付)も検討すべきである。

4.将来にわたってすべての人に安心と信頼の医療の確保に取り組む
 医療と医療保険は私たちが安心してくらすために不可欠なインフラである。少子高齢化が進行する中でも、効率的かつ良質な患者本位の医療提供体制、医療従事者の働き方改革、持続可能な医療保険制度を実現するため、連合は、構成組織・地方連合会、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」や被用者保険関係団体などと連携し、引き続き被保険者、患者、労働者の声を政府・政党に届けていく。

以 上