事務局長談話

 
2020年12月21日
「2021年度政府予算案」の閣議決定に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.コロナ禍で露呈した脆弱性を是正させていく視点が不十分
 12月21日、政府は一般会計総額を当初予算としては過去最大の106.6兆円とする、2021年度予算案を閣議決定した。デジタル化、脱炭素社会などの推進に向けた対策を多く盛り込むが、医療の最前線を支える医療関係者への迅速な支援や、有期雇用など不安定な雇用形態、フリーランスなど曖昧な雇用の就業者を巡る様々な格差など、コロナ禍で露呈した日本社会の脆弱性を是正させていく視点が不十分である。
 また、政府は本予算案と12月15日に閣議決定した2020年度第3次補正予算案と合わせた「15か月予算」の考え方により、財政支出40兆円規模の経済対策を行うとしている。危機が続く中で、雇用維持や事業継続を支える予算の盛り込みは当然の措置であるものの、財政悪化が深刻度を増す中で、これまでに実施してきた経済対策の使途や効果が十分に検証されないまま規模ありきになっているとの印象が拭えない。

2.雇用調整助成金の特例延長と在籍出向の推進については評価
 連合が求めていた、雇用調整助成金の特例措置の延長および在籍出向のさらなる活用につながる新たな助成制度の創設などが盛り込まれたことは評価できる。一方、今後の当該特例措置の縮小については、今後の感染症の状況を踏まえて判断すべきである。また、感染収束の兆しが見えない中で、中小企業に対する持続化給付金など直接的な支援策が盛り込まれなかったことは残念である。中小企業の業態転換や事業再編を促す目的で「事業再構築補助金」が新設されるが、その取り組みにおいては雇用のセーフティネットを担保し、失業なき労働移動の仕組みを同時に構築すべきである。

3.医療・介護従事者の処遇改善とさらなる少人数学級の推進を
 「感染拡大防止と社会経済活動の両立」にあたっては、医療はもちろんのこと介護・高齢者福祉の提供体制の確保のため、現場で働く者の処遇改善を中心とした離職防止対策に全力を挙げる必要がある。また、待機児童の速やかな解消にあたっては、保育の質を確保すること、安心して出産するための自然分娩を含めた健康保険の適用、妊娠期から子育て期にわたる相談支援体制の構築が極めて重要である。
 また、公立小学校の学級定員を35人以下に段階的に引き下げる措置が盛り込まれたことは評価できる。その上で、教員が一人ひとりの子どもと向き合う時間を確保しきめ細かな教育を行うためには、さらなる少人数学級の推進が求められる。

4.生活・雇用・経済の安心と安定の確保に向け引き続き全力で取り組む
 国難ともいうべき今回の危機においてこそ、持続可能な社会につなげていくために、雇用の質の向上やセーフティネットの確立、格差是正につながる歳出項目へ予算配分を重点化する必要がある。それとともに将来世代に対する責任を全うするためにも、税財政一体で解決をはかることが不可欠であり、中長期的な財政運営を客観的に評価する独立財政機関を設置すべきである。
 連合は、国民の生命と健康を守り、生活・雇用・経済の安心と安定の確保に向け、政府・政党への要請行動など、政策・制度要求の実現に引き続き取り組んでいく。

以 上