事務局長談話

 
2020年12月10日
与党「令和3年度税制改正大綱」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.コロナ禍で直面する課題に関し一部前進も、改革の全体像には踏み込まず
 12月10日、自民・公明両党は「令和3年度税制改正大綱」(以下、「大綱」)を決定した。大綱には、法人税の繰越欠損金控除上限の引き上げや中小企業の法人税率軽減措置の延長などコロナ禍への対応として必要となる措置や、グリーン投資への優遇税制など次世代産業の育成支援に向けた新たな税制が盛り込まれた。一方、格差是正に向けた所得再分配機能の強化や、持続可能で包摂的な社会保障制度などの構築に必要な安定財源の確保に向けた改革の全体像が示されなかったことは遺憾である。

2.貧困の固定化と格差の拡大が進む中、税による所得再分配機能の強化を
 コロナ禍により貧困の固定化と格差の拡大が一層進む中、金融所得課税の強化が昨年に引き続き見送られたことは大変残念である。所得再分配機能の強化に向けた重要課題であり、早急に結論を出すべきである。また、教育資金などの一括贈与に係る非課税措置の延長が示されたが、資産を有する者ほど有利な制度であり、家族内の承継ではなく寄付の促進など社会への還元を促す方策を検討するべきである。
 大綱には、確定給付企業年金(DB)を併用している場合の企業型確定拠出年金(DC)の拠出限度額の見直しが盛り込まれているが、コロナ禍でDBの縮小や廃止等の影響が懸念されるため、施行時期は慎重に検討するべきである。

3.マイナンバー制度を活用した「給付付き税額控除」の導入を
 政府・政党には、社会保障制度などの充実とあわせ、税制の抜本改革に向け徹底した議論が求められる。とりわけ、今般のコロナ禍において、わが国のセーフティネットの脆弱性が改めて浮き彫りとなったことを踏まえ、真に必要とする層に迅速かつ適切な支援を行うことができる仕組みが必要である。マイナンバー制度の活用による適切な所得捕捉を実現し、困窮に直面する人々に対する円滑な社会サービスの提供にも資する「給付付き税額控除」の導入を進めるべきである。

4.連合は「公平・連帯・納得」の税制改革実現に向けて取り組む
 将来世代への負担の付け回しに歯止めをかけ、持続可能で包摂的な社会を実現すべく、連合は年明けからの通常国会における税制改革関連法案の徹底した審議を求めるとともに、政府・政党との協議や政府税制調査会での意見発信など、働く者・生活者の立場に立った「公平・連帯・納得」の税制改革実現に向けて取り組んでいく。

以 上