事務局長談話

 
2020年10月16日
「ビジネスと人権」に関する行動計画の策定・公表に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.「ビジネスと人権」に関する行動計画の策定を歓迎
 
10月16日、政府はわが国の「ビジネスと人権」に関する行動計画を公表した。2011年に国連決議で支持された、人権を保護する国家の義務や人権を尊重する企業の責任について原則を示した「ビジネスと人権に関する指導原則」の実施、普及に係る行動計画が、わが国で初めて策定された。労働者の権利を擁護する立場にある労働組合のナショナルセンターとして、行動計画の策定を歓迎する。

2.人権保護に関する既存施策のギャップ分析がなく今後の改善に疑問が残る
 今回の行動計画では「国家の責任」として、労働や子どもの権利の保護、消費者の権利などの分野における、人権を保護する既存の取り組みが網羅的に記載された。しかし、計画段階で既存の政策効果を評価するギャップ分析が行われておらず、計画そのものが今後の人権保護の改善に資するものか否かについて疑問が残る。

3.労働者の権利保護に向け、行動計画にある改善点の着実な実施が必要
 連合は、2018年のベースラインスタディ(現状把握調査)をはじめ、2019年4月に設置された諮問委員会、作業部会にそれぞれ参加し、働く者の立場から、行動計画に対する意見反映に努めてきた。その結果、連合が主張してきた、基本的なILO条約の批准に向けた努力の継続、外国人労働者の権利保護の強化、OECD多国籍企業行動指針にもとづくナショナル・コンタクト・ポイント(NCP)の強化の促進などが行動計画に盛り込まれた。政府は、今回の行動計画を着実に実施していかなければならない。

4.連合は人権保護の強化に向けて引き続き取り組む
 行動計画の着実な実施にあたっては、ステークホルダーによるモニタリングが不可欠である。また、企業活動に関わる人権保護については、労使の対話による検証も重要であり、この点も含めて、5年後の計画の見直しに向けた、政府やステークホルダーとのソーシャル・ダイアログ(社会対話)を充実させていく必要がある。連合は、第4章に記載されている「行動計画の実施・見直しに関する枠組み」に、ステークホルダーとして引き続きの参加を求めていくとともに、関連する他のステークホルダーとも連携して、わが国の企業活動に関わる人権保護の強化に向けて取り組んでいく。

以 上