事務局長談話

 
2020年07月17日
政府の「成長戦略実行計画」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長     相原 康伸

1.働く者・生活者の視点に立った実効性のある対応が必要
 7月17日、政府は「成長戦略実行計画」(以下、「実行計画」)を閣議決定した。副業・兼業における労働時間の考え方の整理や、「パートナーシップ構築宣言」にもとづく取引適正化に向けた取り組み、コロナ禍で必要となったテレワークやオンライン教育の基盤整備をはじめとする経済・社会構造の変革への対応など、連合が求めてきた項目が盛り込まれた点は評価できる。今後、働く者・生活者の視点に立ち、実態を十分に踏まえた実効性の伴う施策を講じていくことが求められる。

2.露呈したセーフティネットの脆弱性を踏まえた見直し・拡充を
 副業・兼業について、労働時間の通算を維持する考え方を明確にしたことは、労働者保護の観点から評価できる。副業・兼業を労働者の自己申告により把握することは実務面からある程度やむをえないが、使用者が負うべき労働時間管理等の責任が労働者に転嫁されることのないようにすべきである。フリーランスについては、独占禁止法などの経済法制をベースに、契約書面の交付や取引上の禁止行為などについて示したガイドラインを策定するとしているが、コロナ禍で露呈した多様な働き方へのセーフティネットの脆弱性を踏まえれば、ガイドラインでは不十分である。労働者概念を見直し、労働法と社会保険を適用するなど、就業者保護の観点が欠かせない。

3.「パートナーシップ構築宣言」による付加価値の適正分配の実現に期待
 「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」において、連合を含む政労使参画のもと確認された「パートナーシップ構築宣言」の導入は、連合が求めてきた「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」の実現につながるものであり評価できる。この実効性を高めるには、宣言の周知・啓発と、定期的な検証と結果の反映が欠かせない。
 人材育成は、ポスト・コロナ時代の重要課題にもかかわらず、「実行計画」では、大企業に勤務する若手社会人に対するリカレント教育の支援策がわずかに述べられている程度である。企業の積極的な人材投資に加え、政府には、企業間・労働者間に格差を生じさせないための積極的な政策対応が求められる。

4.ポスト・コロナ時代を「誰一人取り残されることのない社会」に
 コロナ禍は、経済・社会、産業構造、さらには生活と雇用などにインパクトを与え得る。政府は、社会対話のさらなる充実をはかり、国民と向き合い、多様な意見に耳を傾け、わが国がめざすべきポスト・コロナ時代の社会像を示していくべきである。
 連合は新型コロナウイルス感染症対策として、政策にさらに磨きをかけ、「『持続可能性』『包摂』を基底に置いた、“誰一人取り残されることのない社会”」の実現に向けた取り組みを加速していく。

以 上