事務局長談話

 
2020年06月09日
公益通報者保護法の一部を改正する法律案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長   相原 康伸

1.真に通報者の保護につながる法案修正がされなかったのは遺憾
 6月8日、参議院本会議において、公益通報者保護法の一部を改正する法律案が可決・成立した。企業の不正・不祥事が後を絶たず、内部通報制度の形骸化や機能不全が指摘される中、法制定以来16年ぶりに通報者保護強化の観点から改正がされたことは一歩前進といえる。しかし、多くの重要な論点が盛り込まれず、真に通報者の保護につながる法案修正がされないまま成立に至ったことは誠に遺憾である。

2.通報窓口の担当者等に対する守秘義務の法定は一定の評価
 今回の改正で、通報窓口の担当者等に対して守秘を義務づけることをはじめ、不利益取扱いから保護する通報者の範囲を社員だけでなく退職者や役員にも広げること、従業員300人超の企業に対して内部通報体制の整備を義務づけることなどが盛り込まれたことは、一定の評価ができる。未だ十分に認知されていない公益通報者保護制度の意義・重要性などについて一層の周知・啓発が求められる。

3.不利益取扱いに対する行政措置の導入見送りは大きな問題
 一方で、通報者に不利益取扱い(報復)を行った企業に対する行政措置や刑事罰の導入は見送られた。当該規定の導入は、公益通報者保護制度に対する従業員の不安や不信の払拭と内部通報の実効性確保に不可欠である。また、通報を理由とすることの立証責任の事業者側への転換についても措置されていない。通報行為と不利益取扱いの因果関係に関する通報者側の立証は、負担も大きく現実的とは言えない。安心して通報ができるよう立証負担の懸念を払拭する必要がある。
 法改正に先立つ内閣府の専門調査会では、連合はじめ大半の委員がこれらの規定の導入に賛意を表明し、特に前者は調査会報告書で要求していたにもかかわらず、改正法には盛り込まれなかった。これは答申のあり方にも関わる大きな問題と言える。附則において「施行後3年を目途として検討を加える」とされたが、速やかに議論を行い、国民の声に応えるべきである。その他見送られた、通報対象事実発生の「切迫性」の要件削除、通報者の探索および通報妨害の禁止などについても、検討を進めるべきである。

4.国民の安全・安心を確保するための法の見直しに引き続き取り組む
 政府は、法の意義を改めて問い直し、公益通報者に不利益を与えず、不正をなくし社会正義を実現すべく、附則に盛り込まれた3年後の見直しを含めた残された課題の検討を早急に進めるべきである。
連合は引き続き、事業者の法令遵守を推進し、国民の安全・安心を確保するための法の見直しに向けた取り組みを関係団体と連携しながら進めていく。

以 上