事務局長談話

 
2020年05月29日
年金制度改革関連法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長   相原 康伸

1.与野党合意で基礎年金の底上げなどの検討規定が追加されたことは評価
 「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が5月29日参議院本会議で可決・成立した。社会保険の適用拡大が小幅にとどまったことや、基礎年金の給付水準の底上げが行われなかったことは遺憾である。しかし、基礎年金の底上げについて、速やかな検討を行う旨の規定を追加する法案修正が与野党合意により行われたことは、前向きに受け止める。

2.すべての労働者に社会保険を適用するよう徹底的な要件の見直しを
 社会保険の適用拡大について、連合が撤廃を求めてきた企業規模要件は存続し段階的な引き下げ(2024年10月に従業員51人以上)とされ、個人事業所の適用業種に10の士業を追加するにとどまった。これらは、未だ適用対象外となっている労働者からすれば不合理であり、社会的公正を欠くものと言わざるを得ない。政府は、企業規模要件の早期撤廃や適用業種の見直しなどの検討促進を求める衆参両院の附帯決議を踏まえ、複数就業者の実態に沿った適用を含めすべての労働者に社会保険が早期に適用されるよう、要件の徹底的な見直しに速やかに着手すべきである。

3.基礎年金の給付水準の底上げに向けた具体的な検討を直ちに開始すべき
 今後長期にわたり給付水準の大幅な低下が見込まれる基礎年金について、国会審議を通して、充実の必要性が与野党を超えて共有された意義は大きい。附帯決議には、保険料拠出期間の延長(40年→45年)の速やかな検討も盛り込まれた。法改正により企業年金や個人年金の選択肢も拡大されるが、高所得者優遇とならないよう、公的年金による所得再分配機能の強化が重要となる。団塊ジュニア世代が高齢期を迎える時期(2035年頃)も迫っており、将来の貧困リスクが高い人々の実態把握と、基礎年金の給付水準の底上げに向け、財源を含め具体的な検討を早期に開始することを求める。

4.誰もが安心してくらし続けられる年金制度の実現に向けて全力で取り組む
 新型コロナウイルス感染症の拡大による雇用や生活への長期的な影響が懸念される中、所得保障政策の柱である公的年金の重要性が再認識されている。人口減少・超少子高齢化が進む中で、将来世代を含むすべての人に安心を提供できる年金制度の確立に向け、国民的な議論の上で着実に制度改革を進めていかなければならない。
 この間、「連合アクション」の一環として記事広告やSNS等による情報発信、動画の配信など世論喚起に取り組んできた。連合は、誰もが安心してくらし続けられる年金制度の実現に向けて引き続き制度改革を提起していくとともに、社会保険の完全適用、基礎年金の底上げの早期実現に向けて全力で取り組む。

以 上