事務局長談話

 
2019年12月27日
労働条件分科会報告「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

  1. 2020年4月1日施行以降に支払われるすべての賃金に適用されることは評価
     本日、労働政策審議会労働条件分科会(分科会長:荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「賃金等請求権の消滅時効の在り方について(報告)」を取りまとめた。報告は、労基法における労働者保護の趣旨を踏まえ、連合が強く主張してきた、①消滅時効期間は原則5年、②適用基準は賃金請求権発生日とし、改正法施行日以降に支払われるすべての賃金に適用、③施行日は改正民法施行と同じ2020年4月1日、と明記したことは評価する。

  2. 見直しにおいては確実に「5年」とすべき
     報告は、労基法上の賃金等請求権の消滅時効が民法上の1年では「保護に欠ける」として定められた点を踏まえて検討する必要があると指摘する。その上で、民法一部改正法により、一般債権の消滅時効期間が5年となったこととのバランスを踏まえ、賃金請求権の消滅時効期間についても原則5年とした。一方、直ちに5年の消滅時効期間を定めることが、「労使の権利関係を不安定化するおそれ」があるとして、記録の保存期間に合わせて当分の間3年となり、改正法施行5年経過後の見直しとされた。「当分の間3年」については、あくまで実務上の負担に対する激変緩和措置であり、見直しにおいては確実に原則の5年とすべきである。

  3. 賃金支払い日を適用基準とすることは非常に重要
     適用基準について、改正民法と異なり、改正労基法施行日以降の賃金支払い日より、全ての労働者の賃金に対し、新たな消滅時効期間が適用される取り扱いとしたことは、職場の分断を生まないためにも、非常に重要である。なお、年次有給休暇と災害補償請求権については、2年の消滅時効期間を維持するとした。年次有給休暇の制度趣旨は、労働者の健康確保および心身の疲労回復等であることを踏まえると、有給休暇が発生した年において確実に取得できる職場環境の整備が重要である。

  4. すべての労働者の権利保護に向けて法案審議に対応していく
     今後、同報告にもとづいて法律案要綱の審議が行われ、次期通常国会に改正法案が提出される見通しである。なお、災害補償請求権については、労働者保護の観点から十分な検討と議論が尽くされたとは言えず、引き続き課題として残っている。消滅時効は、未払いの賃金等債権が発生した場合に問題となるが、そのような未払いを発生させないことが大前提である。連合は、確実な賃金の支払とすべての労働者の権利保護、2020年4月の改正法の着実な施行に向け、国会における法案審議に対応していく。


以 上