事務局長談話

 
2019年12月25日
社会保障審議会年金部会における議論の整理に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

  1. 公的年金の機能強化に資する改革は不十分
     厚生労働省社会保障審議会年金部会(部会長:神野直彦 日本社会事業大学学長)は12月25日、2020年年金制度改革に関する「議論の整理」をとりまとめた。繰下げ制度の柔軟化、在職定時改定の導入、60代前半の在職老齢年金の基準額の引き上げなど、年金受給の選択肢拡大や高齢期の就労環境整備の観点からは評価できる。しかし、社会保険の適用拡大についてはきわめて小幅な要件の見直しにとどまり、また将来にわたって大きく低下していく基礎年金の給付水準の引き上げにつながる検討もなされないなど公的年金の機能強化に資する改革としては不十分である。

  2. 社会保険の適用拡大は不十分な見直しにとどまる
     「議論の整理」では、2024年10月に51人以上の企業まで適用するよう企業規模要件を段階的に引き下げること、1年以上の勤務期間要件を2か月以上とすること、5人以上の個人事業所の適用業種に10の士業を追加することが示された。働き方や勤務先の違いなどによって社会保険適用の有無が異なることは不合理であるにもかかわらず、本来撤廃すべき企業規模要件が存続され小幅な見直しにとどまったこと、労働時間要件や賃金要件などが全く見直されなかったことは問題である。特に企業規模要件は法案策定過程でさらなる後退が懸念されるところであり、すべての労働者が原則適用されるよう、さらなる適用拡大を進めるべきである。

  3. 基礎年金の給付水準の引き上げが急務
     2019年財政検証結果によれば、ケースⅣではモデル世帯の基礎年金の給付水準が2019年に対し2053年には約36%低下するなど、いずれのケースでも基礎年金が将来的に大きく低下していくことが明らかになった。にもかかわらず、「議論の整理」では、基礎年金の所得再分配機能を強化することの重要性に言及する一方で、基礎年金の給付水準の引き上げのための方策である保険料拠出期間の延長が先送りされたことは遺憾である。団塊ジュニア世代が高齢期に差し掛かる2035年を見据え、基礎年金の給付水準の引き上げによる公的年金の所得再分配機能の強化が急務であり、直ちに検討に着手すべきである。

  4. 連合は公的年金の機能強化に資する法改正に全力で取り組む
     今後、年金改革にかかる改正法案が次期通常国会に提出される予定である。超少子高齢化が進む中、だれもが安心してくらし続けられるよう、政府・与党は安心と信頼が確保された年金制度の実現を求める社会的要請に応える必要がある。連合は、社会保険のさらなる適用拡大、基礎年金の給付水準の引き上げによる公的年金の機能強化に資する法改正の実現に向けて、立憲民主党や国民民主党などと連携しつつ、構成組織・地方連合会・連合本部が一体となり全力で取り組みを進めていく。


以 上