事務局長談話

 
2019年12月23日
「雇用保険部会報告」および「労災保険部会報告」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長   相原 康伸

1.複数就業者に対するセーフティネットの拡充は概ね評価
 12月20日、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会において「雇用保険部会報告」が、また、23日には、労働条件分科会労災保険部会において「労災保険部会報告~複数就業者に係る労災保険給付等について~」が取りまとめられた。65歳以上の複数就業者(マルチジョブホルダー)への雇用保険適用や、労災が発生した場合の複数事業場の賃金額を合算した休業補償の給付など、複数就業者に対するセーフティネットの拡充が盛り込まれた点は概ね評価できる。

2.高年齢雇用継続給付の縮小および国庫負担の引き下げ継続は誠に遺憾
 「雇用保険部会報告書」の主な内容は、高年齢雇用継続給付の縮小や、雇用保険料率および国庫負担の引き下げ措置の2年間の継続などである。
 高年齢雇用継続給付は、65歳までの継続雇用のセーフティネットとしての役割を果たしているため、まずは政府としても同一労働同一賃金に関する法施行の確実な実施を後押しすることを優先し、その進捗状況も踏まえながら制度のあり方を検討するべきである。また、国庫負担の引き下げ措置の継続は、「厳に3年間に限る」とした2017年雇用保険法改正時の附帯決議を反故にするものであり、その重大さを政府は真摯に受け止めるべきである。

3.複数就業者が安心して就労するために必要な労災保険制度の改正は評価
 「労災保険部会報告」の主な内容は、複数就業者が被災した場合、(1)複数の事業主から得ていた賃金を合算して給付額を決定、(2)労災認定にあたり、労働時間やハラスメントなど複数事業場での負荷を総合して評価し決定するというものである。また、請負で働く者の保護を念頭に、労災保険特別加入制度の対象範囲や運用方法などについても、見直しを行う方向が提起されたが、今後、部会において働き方の変化をふまえた適切な制度運用となるよう、その議論に積極的に参画していく。

4.国会審議に向けて懸念点や課題を払拭すべく対応していく
 今後は、両部会報告にもとづき、労働政策審議会での関連法案要綱の審議を経て、次期通常国会への法案提出が見込まれる。雇用保険部会報告で示された国庫負担の引き下げ継続が厳に2年間に限定されるよう、また、労災保険部会報告において示された特別加入制度の適用範囲拡大に向け、連合としても政府・政党に対する働きかけを含め、法案審議への対応を行っていく。

以 上