事務局長談話

 
2019年09月20日
厚生労働省「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」における議論のとりまとめに対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

  1. 適用拡大の明確な方向性が示されず遺憾
     厚生労働省「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」(座長:遠藤久雄国立社会保障・人口問題研究所長)は、9月20日に議論をとりまとめることとした。懇談会では建設的にヒアリングや議論が重ねられた結果、「基本的な考え方」として適用拡大の必要性が強調されるとともに、「今後の検討の方向性」として勤務期間要件の見直しについては必要性が明記された。しかし、それ以外の要件は、今後の社会保障審議会での議論に十分に資する内容とはいえず遺憾である。
     

  2. 企業規模要件撤廃、労働時間・賃金要件等の緩和について結論は示されず
     連合は、経過措置である企業規模要件(500人以下の企業等では労使合意にもとづき短時間労働者等への適用が可能)の撤廃を強く求めてきたが、「本来的な制度のあり方としては最終的には撤廃すべきものである」とされつつも、施行時期・あり方に配慮するなど支援措置の必要性を指摘する意見も併記され、明確な結論は示されなかった。また、労働時間が短い者や賃金水準が低い者、現在非適用となっている業種などへの適用の拡大についても慎重な書きぶりとなっており、働き方や生き方の選択によって不公平が生じない制度をめざすべきとする「基本的な考え方」からすると、極めて問題が多い。
     

  3. 短時間労働者等への社会保険の適用拡大は喫緊の課題
     年金に対する不安が高まっている今日、就職氷河期世代を含む将来の無年金・低年金者を防ぐ観点からも、すべての働く者に社会保険を適用し、将来の生活保障を確保することが喫緊の課題である。加えて、2019年財政検証結果では、適用拡大が年金財政の安定に資するとの結果が示されており、さらなる適用拡大によって将来の給付改善と制度の持続可能性の向上を同時に実現すべきである。
     さらに、社会保険制度の公正性を高めることの重要性に鑑み、未適用事業所の確実な適用を進めるため、日本年金機構の体制を強化すべきである。
     

  4. 連合は、さらなる適用拡大・適用促進に向け全力で取り組む
     今後、議論のステージは社会保障審議会年金部会へと移る。雇用形態の違いや企業規模の大小により社会保険の適用の有無が異なることは不合理であり、すべての働く者に社会保険を原則適用させる制度に改める方向での検討が重要である。連合は、構成組織・地方連合会とともに、適用拡大の重要性を社会全体に訴えかけ、世論喚起をはかる取り組みを全力で進めていく。


以 上