事務局長談話

 
2019年05月17日
「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」の成立についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

  1. 「束ね法案」による国民にわかりにくい法案審議
     「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案」が5月15日、参議院本会議で与党、立憲民主党、国民民主党などの賛成多数により可決・成立した。同法はマイナンバーカードによる受診や医療・介護データベースの連結解析など、国民の利便性の向上や効率的な医療保険制度の実現の意味で期待できる点もあるが、外国人差別につながりかねない点や情報セキュリティの保護などの課題も残るものである。7本の法律を改正する多様な内容を含む「束ね法案」として審議されたが、国民にとって一層分かりやすい国会審議が行われるべきであった。

  2. 外国人に対する差別のない医療保険の運用を
     日本からの海外赴任に同行する家族等への給付を引き続き認める一方で、健康保険等に国内居住要件を追加し、技能実習生や特定技能1号外国人など在留外国人の在外扶養家族への給付をやめることは、外国人差別につながりかねないとの指摘が、国会審議で野党から繰り返された。今後は、国会附帯決議を踏まえ、被扶養者認定や「なりすまし」対策の実施にあたって差別的な取り扱いが行われないよう、取り扱いの明確化や保険者・医療機関等に対する指導を行うべきである。
     

  3. マイナンバーカードによる受診の普及と診療報酬審査の質の確保を
     法改正によるオンライン資格確認の導入により、マイナンバーカードによる受診に道が開かれることとなり、患者の利便性が高まることが期待される。その際、政府は国会附帯決議を踏まえ、セキュリティ対策の充実と透明性の確保に取り組み、患者が安心して利用できるよう取り組むべきである。また、社会保険診療報酬支払基金の都道府県支部の規定が廃止されるが、現在各支部で行われている審査委員会による審査体制を引き続き確保し、無駄な医療費の抑制に一層取り組むべきである。

  4. 連合は将来にわたる安心と信頼の医療の確保に向け取り組む
     医療は私たちの生活になくてはならない基盤であるが、少子高齢化の進展によりその持続可能性の確保も課題となっている。しかし、保険あって給付無しとなっては本末転倒である。医療費の適正化には医療保険制度による対応だけでは不十分であり、医療提供体制の適正配置が極めて重要である。連合は、将来にわたって安心と信頼の医療が確保されるよう、被保険者・患者・提供者の立場から政策実現に取り組んでいく。
    以 上