事務局長談話

 
2019年03月05日
法科大学院教育および司法試験制度改革に対する談話
日本労働組合総連合会

事務局長 相原 康伸

 

  1. 検討案の内容は、司法制度改革の理念が置き去りにされている
     現在政府において、法科大学院における法曹養成教育と司法試験制度のあり方、および両者の関係について検討が行われている。今後、通常国会に、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、司法試験法などの改正法案の提出が見込まれている。当初検討案には、司法試験から選択科目を廃止する内容が含まれており、選択科目の関係学会および法曹養成の関係者などからは、多くの懸念の声や意見書が公表された。現状の改善は必要であるが、「21世紀を担う法曹に必要な資質」とは「幅広い教養と専門的知識」等に加え、「社会や人間関係に対する洞察力」等も求められると指摘した2001年「司法制度改革審議会意見書」(以下、「意見書」)の理念を置き去りにしたまま、改革の議論が先行することは問題である。
     

  2. 法曹養成のあり方全般についての議論が必要
     検討されている案は、①法学部と法科大学院を一体的に運営する「法曹コース」の設置、②法科大学院最終学年での司法試験受験の容認等を含む内容となっている。その背景には、法科大学院を修了せずとも司法試験受験資格が得られる予備試験への需要が高まっていることへの危機感があるとされる。しかし、現在の法科大学院を含む法曹養成課程が、「司法試験という「点」のみによる選抜」ではない、「プロセス」としての法曹養成制度という「意見書」の掲げる法曹のあり方を実現できているのか、大学教育や学生への影響はどの程度になるのか、司法試験の質は確保できるのかという観点から、今一度、幅広い関係者の参画のもとでオープンに議論すべきである。
     

  3. 多様化する労働の現場を踏まえれば、専門分野の重要性は高まっている
     今日、労働の現場でも、紛争の内容は多様化、複雑化している。ハラスメントや差別などのトラブルの増加や、技能実習生など日本で働く外国人労働者に対する法違反も多発している。また、労基法改正や同一労働同一賃金の法整備など、社会の変化に合わせた改正が毎年のように行われている。労働紛争の公正で適正な解決は急務であり、そのためには労働法に通じた法曹を養成することは社会の要請である。多様化する社会において、専門分野の重要性が一層高まっていることに鑑みれば、今回の改革に伴って司法試験受験までの期間が短縮されることにより、将来的に司法試験の選択科目が廃止されるようなことがあってはならない。国民生活に大きな影響を与える課題であり、国民的議論により合意形成を行うべきである。
     
    以 上