りきおのオピニオンスタジアム

 
2014年9月1日
第29回「オスカー君と私たち」

~双方向の思いやりが失われているのでは・・・~

 オスカー君の話題が各紙でとりあげられました。何者かにフォークのようなもので腹を4ケ所刺されたという、あの盲導犬のオスカー君です。  悲鳴をあげたり、抵抗したりすることを禁じられた盲導犬に対する、実に卑劣な行為です。
 犬たちは、1万年に及ぶパートナーの歴史を持つ、人間にとって誠に貴重な存在です。彼らは人間の言葉をかなりの程度理解できます。それにくらべて、私たち人間は犬たちの気持ちをどれだけ汲み取れているのか。コミュニケーションは双方向のものです。そこに初めて本当の「思いやり」というものが生まれるのだと思います。今回の事件は、同じ人間として犬たちに顔向けのできない、全く申し訳ない話だと思います。

 そしてこのような事件のたびに言われることですが、社会にうるおいがなくなっているのではないか、すさんだ感情が世の中をおおっているのではないか、ということです。
 私も様々な局面でそのようなことを感じます。雇用・労働の問題も大いにかかわりのあることではないかと思います。
 双方向の思いやりが失われているのではないでしょうか。

~人間らしい働き方を実現するのが本来の政策立案~

 過日、不幸にしてご家族を過労死や過労による自殺で失われた方々の会「全国過労死を考える家族の会」が連合・古賀会長に、ホワイトカラーエグゼンプション反対の要請に来られました。報道でも取り上げられたのでご存知の方も多いと思います。「東京過労死を考える遺族の会」代表によれば、亡くなられた代表のご主人自身が年収一千万円以上でいらしたとのことです。
 先日(8月29日)の労働政策審議会のなかで私はそのことにも触れながら、今回厚生労働省から提示されている2015年度の重点政策の筆頭に取り上げられている「新たな労働時間制度」に対する反対意見を述べました。そのあと経営側の委員の方々から賛成意見が述べられたので私は重ねて、「karoshiという言葉が世界共通の言葉になってしまっている。欧米に過労死などあるのか?経営側はこのことに目を向けてもらいたい」と発言しました。
 もちろん経済成長は大事だと思います。将来世代の生活と福祉を支える原資は確保していかなければなりません。しかし私はこの問題はむしろ経済成長に逆行する話だと思っています。過労死が横行する実態を置き去りにして、働く者が意欲を高めて成果の向上に尽くすなどできるわけがありません。

 一方通行の流れでは、本物の政策は実現しません。「思いやり」と密接不可分な双方向のコミュニケーションが不可欠です。働く者の思いを取り込まない政策は弊害をもたらすだけです。

 今、雇用労働政策に求められているのは、人間らしい働き方の実現に他なりません。

(神津)

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