りきおのオピニオンスタジアム

 
2014年5月19日
第20回「一部の人たちの意見が重んじられるパターンはなぜ?」

~集団的自衛権の議論…にぎわいのもたらす錯覚~

 先週15日に、いわゆる安保法制懇の報告書が出され、それを受けて安倍総理から、関わる問題の基本的方向性が述べられました。
 これらの内容そのものに対する受けとめについては、16日付で談話を出しましたので、是非そちらを参照していただきたいと思いますが、ここでは、そこで述べていることとは別種の危惧を二つ提示しておきたいと思います。
 その一。たとえ一部の偏った論調の方々の意見が集約された報告や答申であっても、総理のお墨付きを得ることで、このような「にぎわい」に移行し、日本の将来を決する大問題の方向性が独り歩きしてしまうという問題です。本来、より多くの人たちの多様な意見と英知を結集してものごとを決めていくという、民主主義の根幹にも関わる問題だと思います。
 その二。我々日本人の弱いところでもあるのですが、メディアを中心とした議論がワッとある一つのテーマでにぎわうと、他の大事なテーマが置き去りにされてしまうという傾向です。

 ワークルールに関わる問題は、まさにその二つの危惧を抱える現実の中で、極めて危険な状況に置かれているのです。

~全ての労働者の残業代ゼロが目標?…オールカラーエグゼンプション!~

 安保法制懇の報告書に関しては、総理の「私的懇談会」ということを含めて問題点は既に指摘されていますが、先日「新たな労働時間制度の創設」なる考え方を打ち出した「産業競争力会議」も、総理が議長という位置付けにもかかわらず、偏った論調のメンバーという意味では似たり寄ったりではないでしょうか。
 ここで打ち出されている考え方はA型、B型などと言われていますが、特にA型は年収要件の設定もなく、労使さえ合意すれば、そして労働者さえ受け入れれば、処遇は労働時間から切り離し、成果に応じたものに切り替える、つまりは残業代ゼロを可能とするということであり、それを全ての労働者を対象とするというものです。ある高名な労働経済の先生がいみじくも、これはオールカラーエグゼンプションだとおっしゃっていました。
 あのホワイトカラーエグゼンプションでさえ、7年前に世論の沸騰で葬り去られたものが、今度はオールカラーエグゼンプション・残業代ゼロ制度というとんでもない内容になって出てきたわけです。集団的自衛権の議論のにぎわいの陰で、こんなとんでもない内容が真顔で語られているのです。
具体的な法律改正の案に向けた議論を最終的にとりしきるのは審議会ですから、そこがしっかりとした議論をすればいいとも言われますが、しかしその前段で、議論のテーマ自体がこのような状況では、スタートラインですでにまともなものが吹っ飛んでいきかねないのです。

~偏った議論の影響を排除していくことが重たい課題になっている~

 もっと目立たない、気が付かれない陰のところで、こんな大事な話も決められようとしています。「職務発明の法人帰属化」という問題です。
 既に産業構造審議会の知的財産分科会特許制度小委員会というところで議論が重ねられてきているのですが、この問題も、昨年6月の「日本再興戦略」の閣議決定で方向性が提示されてしまったなかでの審議会ですから、このままでは実におかしな内容が法案として決められそうになっているのです。連合としても強く問題指摘をしてきていますが、「にぎわい」の陰で国民が全く気が付かないなかで危機感を高めています。
 そもそも、過去の青色発光ダイオードの高額訴訟問題を受け、2004年に法改正がなされている問題です。その後なんら裁判沙汰が生じていないにもかかわらず、一部の人たちの意見が重んじられ、「職務発明は会社のものとせよ」という法改正が目論まれているのです。
 なぜなのでしょう?これも外資を呼び込むためですか?日本人の研究者が、渾身の力で、自らの人生をかけて実現したものに対して、正当な対価を要求できなくなるということです。「世界で一番ビジネスのしやすい国にする」とはこういうことでしょうか?しかし結果として、意欲ある研究者はさらに海外に流出していくことでしょう。

 亡国の種をまく議論があちらこちらで噴出しています。

(神津)

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