りきおのオピニオンスタジアム

 
2014年5月1日
第18回「『細工』をせずとも『加工』になってしまう恐ろしさ」

~今日が本当の「メイデイ」ですが~

 1886年に米国ではじまった「メーデー」は文字通り5月(メイ)の1日に行われたことから、この名前とともに定着している働く者の祭典です。連合では本部と連合東京が中心となって、労働福祉四団体の協賛・東京都の後援を得て、「中央メーデー」として例年代々木公園を会場として開催しています。
 地方連合会によっては5月1日の開催を継続しているところもありますが、中央メーデーはかなり前から集まりやすさを優先した日程配置とさせてもらっています。今年は4月26日、好天に恵まれ、約4万人の参加のもと、開催をすることができました。
 野外音楽堂でのパフォーマンスや、関係団体による約80の出店もあって、今年も多くの家族連れでにぎわいました。

~多様な報道ぶり~

 10時半から行われた式典については、多くのメディアにより報道されました。
 それぞれの報道ぶり、その多様さもあって、いろいろと考えさせられました。特に各テレビ局の報道についてです。報道の当事者の方々にはそのような意識はなかったのかもしれませんが、どういう編集をするかで、それが見えざる意図を含んだ「加工物」となってしまうということをあらためて感じました。
 いくつかのテレビ局は「働く者を犠牲にする成長戦略を描くことは許されない」との古賀会長の挨拶や、参加者全員で確認した「労働者保護ルールの改悪に断固反対する特別決議」にも適宜触れていましたが、なかには、安倍総理の挨拶だけを取り上げているところもありました。メーデーの報道で総理の挨拶だけを取り上げるというのもどうなんでしょうか。(前回も述べたように、「当たり前でない」ことしか取り上げないとそういうことになるのでしょうか?私からすると迫り来る労働者保護ルール改悪は極めて「当たり前でない」ことと思うのですが・・・)
 そして実際に参加された方々はご存知なのですが、実は総理の挨拶の間、一部の方々からのヤジがかなり目立つ場面がありました。しかしテレビで流されたのは壇上のマイクの音だけで、あの場に集音マイクがあったかどうかは知りませんが、それらの声は一切テレビには流れていないわけです。良い悪いはとりあえず別としても、現場に居合わせた方々の持たれた印象とはずいぶん異なった雰囲気の報道となったことは事実と思います。これも一種の意図せざる「加工」といえるかもしれません。
 一方ではその辺を正確に記述された新聞報道もありました。私たちは映像のニュースをみると、他人が記述したものよりもとりあえず自分の目で見ているものとして信じるのが普通かもしれませんが、実際にはどの程度加工されているのかということを、十分に意識をしておくことが必要ではないでしょうか。そのことを改めて実感しました。

~労働時間の問題は「現場・現物・現実」が伴わなければ前に進まない~

 このメーデー、その由来は長時間労働の苦しみから脱却すべく8時間労働制を求めて立ち上がった米国の労働者の集会を起源としています。
 ひるがえってわが日本の実態をみるならば、「サービス残業」、「過労死」、「ブラック企業」などという単語が当たり前のように使われるという、極めて憂慮すべき状況が引き続いています。本来、国の行政はこのような事態を改善するための実効ある具体策に踏み出していくべきですが、今、政府の産業競争力会議で検討し進めようとしているのは、全く次元の異なる、新たな労働時間制度の仕組みという考え方です。
 この内容は、いわゆるホワイトカラーエグゼンプションの考え方に加えて、一般社員の残業代さえも労使の合意によって外してしまうという内容を含んでおり、極めて危険な内容と言わざるを得ません。(本ホームページ所載の4月23日付談話をご参照ください)
 いったい誰がそれを望んでいるのでしょうか?
 私には、これまでまともな労使が長年大事にしてきた「現場・現物・現実」の視点がここには欠けていると思います。このような机上の空論が独り歩きするならば、わが国の労働時間のすさんだ実態はさらに悪化をしていくことは必定です。
 「加工」された画面からはこの危機感は伝わりません。

(神津)

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