会長挨拶

 
2026年10月8日
連合第98回中央委員会 会長挨拶

日本労働組合総連合会
会長 芳野 友子

<はじめに>

 皆様、おはようございます。本日は、ご多忙の中、第98回中央委員会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

 はじめに、7月末の熊本地震、8月半ばの千葉豪雨、それに続く全国各地での豪雨災害、そして9月半ばの台風25号による風水害によって、多くの方がお亡くなりになりました。
 心から哀悼の意を表しますとともに被害を受けた皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。

 10年前の2016年に、短期間のうちに2度も震度7を観測する未曽有の震災を経験した記憶が未だ鮮明な中、ふたたび熊本で巨大地震が発生いたしました。
 被災された皆様のご心痛はいかばかりかと胸が痛みます。
 全国各地で発生した今夏の風水害では、繰り返し被害に遭われた方もおり、自然災害の過酷さを恨めしく思います。

 熊本地震に対しては、少しでも被災地の復旧・復興の一助とすべく、連合として緊急カンパや救援ボランティアを実施しております。
 緊急カンパについては、全国の仲間の皆様から、たくさんのご支援をいただきました。皆様のご協力に衷心より感謝申し上げます。
 救援ボランティアは、9月7日より開始し、現在、第4クールを展開中です。今、この瞬間も被災地で活動をしてくれている仲間がいます。敬意を表したいと思います。

 ひと夏の間に風水害が相次ぐ状況は、ここ数年、連続しており、河川の近くに住んでいる方やそのそばに通勤・通学している方は、高い警戒心を持って過ごしておられるものと思います。
 一方で、およそ水害が発生することを想像することができないような市街地でも、内水氾濫とよばれるような災害が発生して、甚大な被害を受ける光景を、この夏は繰り返し目の当たりにいたしました。

 誰がどう見ても、このような気象災害は異常であると言わざるを得ません。最新の環境白書によりますと、「1898年から2025年までの期間において、日本の年平均気温は100年当たり1.44℃の割合で上昇して」おり、「農作物の収量や品質の低下、農業用水等の不足、サンゴの白化、土砂災害発生件数の増加、熱中症による死亡者数の増加、電気・ガス・水道等の寸断等が、現時点において既に現れている」と指摘しています。
 私たち一人ひとりの体感としても、このような指摘を十分に理解することができますし、一刻も早くカーボンニュートラルを実現しなければならない、という危機感を共有することができるのではないでしょうか。

 日本をはじめ世界各国は、脱炭素への取り組みを加速させており、「産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換」させるために、GXの実現が急がれています。
 地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素排出量の部門ごとの割合は、当然ながら産業部門が最も多いものの、家庭部門の割合も約15%を占めており、私たちの行動様式のあり方によって削減できる余地はまだまだあります。

 私たち労働組合としては、連合エコライフで提唱している日常生活での個人の行動様式の見直しを後押しすることに加え、これまであまり目を向けてこなかった労働運動そのものにおける脱炭素を意識した行動様式の変化に、あらためて課題意識を持ち、スピード感をもって取り組んでいかなければならないと考えます。
 労働界としても、組合事務所などの事業所、さまざまな活動に使う大量の機材、昼夜を問わずに行われる各種活動も、脱炭素化においては治外法権があるわけではありません。
 このまま異常気象が続けば、望むような活動は気象条件によって制約されていきます。実際に、今夏、広島での平和行動では参加者や関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんでしたが、熱中症リスクを回避するために急遽、一部の取り組みを取り止める判断をさせていただきました。

 平和運動において、「民主主義や平和なくして労働運動なし」とのスローガンを参考にすれば、「脱炭素化なくして労働運動なし」と言っても過言ではない、というところまで追い込まれているとの認識を持たざるを得ません。
 このような危機感から、これまで節電を中心に取り組んできた「ピークカットアクション」を補強、刷新し、脱炭素化に向けた新たな取り組みを今月の中央執行委員会で提案する予定になっております。
 人命を守る、生活を守る、地域を守ることはもとより、私たちの取り組みを守るためにも、脱炭素化に向け、いま一度、どのような取り組みをすべきか、あるいはどのように行動を変えていくべきか、見つめ直し、連合全体で取り組んでいきましょう。

<組織拡大の取り組み>

 さて、第19期の取り組みは、本日をもって折り返しとなります。
 今期の最重要課題の一つとして「組織拡大」を掲げて取り組んで参りました。組織拡大に尽力された皆様に敬意を表したいと思います。

 とりわけ、地方ブロックに配置されたオルガナイザーの皆さんの粘り強い取り組みが組織拡大に寄与し、近年の組織人員数の減少トレンドに歯止めをかけ、反転攻勢への足掛かりを築いてくれております。
 この後、組織拡大プラン2030に基づく、今後の組織拡大目標について報告する予定です。容易な目標ではありません。

 組織拡大は、数値を追うだけなら簡単なことかもしれませんが、結局は、現場において、たった一人の未加入者に労働組合の意義や活動に共感してもらい、加入していただくというプロセスを積み重ねることでしか達成することができません。
 その取り組みを担うのは、現場で活動する様々な階層の組合役員です。仕事と掛け持ちしながら取り組む人も大勢います。当然ながら、「面倒だなぁ」「嫌だなぁ」と思う気持ちが先に立つことも理解できます。
 それでも頑張って声をかけてみても、けんもほろろに断られようものなら、心が折れ、もう一度やってみようとは思えなくなってしまうこともあります。
 ましてや労働組合に対する世間の理解は、総論賛成、各論には慎重、つまり労働組合はあった方がいいけれども、自分が組合に入ることまでは・・・というジブンゴトにはなり難いものもありますし、そもそも総論すら反対という方もいます。
 どのように目標を達成していくのか、加盟組合、構成組織、連合それぞれの本気度が試されています。

 加えて、労働組合に加入したからと言って、すぐに個人の処遇や境遇が好転するような条件ばかりではなく、仲間と一緒になって交渉などを通じて解決していくという地道な努力が必要です。
 組合費を払えさえすれば、自動的に目に見えるメリットが付与されるような会員サービスではありません。
 労働組合を取り巻くこのような環境の中で、一人ずつ仲間を増やしていくことは、とても難しく、手がかかる取り組みであることは、ここにいるすべての皆様が共感するところではないでしょうか。

 こんな困難極まりない課題を前に、それでも一人でも多くの仲間を増やしていかなければならない理由は、私たちの運動の道しるべである「連合の進路」に明示されています。
 すなわち、労働組合は「力と政策」を備えることが必要であると宣言しています。そして、その「力」とはまさに組合員という数の力、連合の旗のもとに結集する一人ひとりの思いや知恵や行動による力なのだということです。

 一方、働き方や職業人生に対する価値観は、ひと昔前と比較しても変容していることは間違いありません。組織拡大を進めていくには、変化に対応していくことが必要です。
 端的に言えば、その場の勢いに任せ、十分な説明をすることなく無条件に加入を迫るような“ノリ”でアプローチしていては、共感を得ることはできません。
 組織拡大は商品販売やサービス提供ではありませんが、加入していただくという観点でみれば、いわゆるカスタマー・オリエンテッドや住民本位などのような視点で臨んでいくことが求められているものと思います。
 つまり、相手をよく観察して、常に手法を最適化しながら取り組んでいくということであり、それは、まさしく「はたらくのそばで、ともに歩む」を組織拡大の文脈で実践することです。

 先日、明治大学の山崎憲教授から「AIとジョブ型は、労働組合に何を問うているか」と題したお話を伺いました。山崎教授は、職場での労働組合による組合員への一対一の聞き取りに改めて力を入れることが必要だと指摘されました。
 現場において、労働組合が組合員から意見を聞くことは当たり前のことですが、その当たり前のことが疎かになってしまっていないかという山崎教授からの問いを真摯に受け止める必要があります。

 組織拡大プラン2030のゴールまで残り4年。あっという間に、時間は過ぎていきます。職場に根差した取り組みを改めて大切にして、目標達成に向けて、全力で駆け抜けて参りましょう。

<春季生活闘争について>

 次に、春季生活闘争について触れたいと思います。
 2027春季生活闘争に向けた準備が始まっていますが、2027闘争については、今月末に春季生活闘争討論集会、さらには次回の中央委員会での議論に委ねることにし、この場では2026春季生活闘争の取り組みに対する感謝を申し上げたいと思います。

 3年連続で5%以上の賃上げを達成したことは、賃上げノルムを定着させる足掛かりになりました。中堅・中小組合の健闘により、企業規模間の格差拡大に歯止めがかかる兆しもみられ、結果にこだわり、労使交渉に携わった皆さまの尽力に感謝を申し上げます。

 2022年からスタートした「未来づくり春闘」の5年間にわたる取り組みの積み重ねによって、日本社会は、賃金も物価も上がらない「慢性デフレのサイクル」から脱却し、「人への投資」を起点とする好循環が回っていく「賃上げがあたりまえの社会」に向けて前進したものと思います。
 賃上げのすそ野も着実に広がり、日本全体の実質賃金もプラスに転じました。しかし、多くの人が生活向上を実感できているとは言い切れず、“賃上げノルム”の定着にむけてさらに努力が必要です。

 これから、2027春季生活闘争の方針策定に向けた議論が本格化します。短期的には、インフレの波を乗り越え、賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に着地させていく局面での取り組みとなります。みんなが将来への希望と安心感を持てるよう、「人への投資」を加速させていきたいと思います。

<労働法制について>

 次に、「労働法制について」触れたいと思います。
 働き方改革関連法の施行後5年の見直しが昨年より始まり、労政審、日本成長戦略会議での議論などを経て、具体的な論点についての検討が労政審の労働条件分科会で再開しました。
 これまで申し上げてきましたように、過労死などの痛ましい事案がいまだなくならない現状などを踏まえ、いま必要なのは、労働者のいのちと健康を守り、豊かな生活時間を確保することです。

 一方で、日本のGDPは徐々に順位を下げ、成長力も低空飛行を続けている中にあって、世界ではAIなどのデジタル分野を中心とした熾烈な産業政策競争が行われており、日本が取り残されているようにも見えます。
 日本は、今が頑張りどきですが、問題は、その頑張り方です。労働力不足の中で成長していくには、働く人が希望をもってチャレンジできる環境づくりが不可欠です。

 そのためには、貴重な人材を従来の長時間労働を前提とした働き方に依存して消耗させてしまうような手法に頼るのではなく、業務プロセスなどの見直しによる効率化・省力化、生産性向上を含めた真の「働き方改革」を実現していくことが重要ではないでしょうか。
 連続勤務規制や勤務間インターバル制度の義務化、「つながらない権利」の立法化など、これまでとは違う新しい価値観に基づいた労働時間規制の強化が必要です。
 今後、労働時間についての議論が進んでいきますので、ご関心をお寄せいただくとともに、適宜、各種取り組みのへのご協力を改めてお願いいたします。

 また、近年、フードデリバリーや物流、クラウドソーシングなど業務委託契約による「プラットフォームビジネス」が急速に拡大してきた一方で、そこで働く者の保護は不十分であるのが現状です。
 今年のILO総会では、プラットフォーム労働者を保護する初の国際基準となる「プラットフォーム経済におけるディーセント・ワーク条約」が、第193号条約として採択されました。

 連合は従来より、「曖昧な雇用」で働く者のうち、実態として労働者である者については確実に労働法による保護が受けられるようにするとともに、社会実態にあわせて労働者概念を見直し、拡充することが重要であると主張して参りました。
 プラットフォームで働く仲間の保護をはかるため、ILO条約の批准をめざすとともに、労働法による保護拡充の取り組みをより一層推進して参ります。

<政治について>

 次は、「政治について」触れたいと思います。
 この間、立憲民主党、中道改革連合、公明党の3党で合流に向けた協議が進められておりましたが、8月31日に合流を見送ることが確認されました。これにより、新たに「民主改革の会」が結党されました。

 同党に集う議員の多くは、連合の推薦議員であり、議員個々人との連携は従来通りはかって参りますが、組織としての連携については、結党間もない党であり、その理念や政策、今後の国会対応を注視していく必要があると考えております。
 特に、中道改革連合の政党交付金については、国民は疑念を抱いており、説明責任を果たし信頼回復に努めていただきたいと思います。

 こうした中、今月5日、第222臨時国会が開会されました。先の特別国会では、与党による数の力を背景とした強引な国会運営が散見されたことは記憶に新しいことと思います。今臨時国会では、来年春からの食料品の消費税減税や衆議院議員定数の削減に関する法案が大きな争点になるとされています。
 とりわけ、消費税については、先月閣議決定された「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」にもとづく法案審議が予定されています。

 このうち「支援金制度」は、連合が長年求めてきた「給付付き税額控除」の実現に向けた第一歩であり、税による所得再分配機能の強化と就労支援に向けて、その仕組みを早期に構築する必要があります。
 しかし、制度導入までの「つなぎ」である「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ」に対しては、社会保障国民会議の実務者会議などにおいて、「減税ほど価格が下がらない可能性」「2年後の税率引上げへの懸念」「現場の混乱」など多くの課題が指摘されていました。
 制度導入までの「つなぎ」は、期間を限定した飲食料品の消費税率引き下げではなく、制度の連続性や親和性を考慮し、「給付」にすべきだと考えます。

 連合出身議員や連合フォーラム議員などと連携し、しっかりとした審議を求めていきます。
 一強多弱とも評される国会情勢ではありますが、政府・与党には「数の力」に驕ることなく、熟議の国会を求めたいと思いますし、野党、特に連携政党である、国民民主党、立憲民主党には、連合政策の実現に向け、尽力いただきたいと思います。

 政治をめぐる情勢は目まぐるしく変化を続けていますが、私たちが政治に取り組む理由は不変です。
 8月には、来年の統一地方選挙に向けた対応方針を確認しました。地域において働く者・生活者の立場に立つ政治勢力の最大化を実現し、次期参議院選挙をはじめとした国政選挙での取り組みに繋げ、連合推薦候補者全員の必勝に向けて、組織一丸となって取り組みを進めて参りましょう。

<ジェンダー平等・多様性推進について>

 最後に、「ジェンダー平等・多様性推進について」触れたいと思います。
 先月、世界経済フォーラムから2026年のジェンダーギャップ指数が発表され、日本は前年より順位を一つ上げ、145カ国中、117位でした。
 これまで、政治経済分野での順位が壊滅的に低い状況でしたが、憲政史上初となる女性の総理大臣が誕生してもなお、当該分野でのジェンダー格差は埋めがたいものがあるということです。

 各構成組織などの定期大会でも触れさせていただいておりますが、連合が1991年に「第一次女性参加推進計画」を立ててから、今年で35年です。
 意思決定の場に参加する女性の人数は徐々に増えていますが、男性中心の景色から飛躍的に変わったとまでは言えず、このままでは40年、50年と時間が経過しても50:50は実現しないのではないかという強い危機感を感じております。

 ジェンダー平等の推進や多様性を尊重する組織づくりの根底にあるものは、多様な価値観や経験、視点を持つ人たちが参画することで、複雑化する課題に対してより良い解決策を導き出すことができるという考え方です。
 社会や産業構造が大きく変化する中で、従来の発想だけでは乗り越えられない課題が増えてきています。だからこそ、多様な声を受け止め、活かしていくことがますます重要になっています。

 連合一丸となって、取り組みをより一層加速して参りましょう。

<結び>

 結びに、連合運動へのご理解とご協力に改めて感謝申し上げ、冒頭の挨拶とさせていただきます。これからもともに頑張りましょう!ご清聴、ありがとうございました。

以上