会長挨拶

 
2021年6月1日
第85回中央委員会 会長冒頭挨拶

日本労働組合総連合会
会長 神津 里季生

 第85回中央委員会にご参加の皆さん、おはようございます。大変ご多忙の中、それぞれのご参加に感謝申し上げます。

 冒頭、謹んでご報告申し上げなければならないことがあります。4月17日、連合参与で、全国労働金庫協会の専務理事でおられました須田 孝( すだ たかし )さんが、ご逝去されました。63歳という若さでありました。
 須田さんは、連合本部では2010年10月から2017年6月までの間、労働条件分野を中心に、連合ならではの理念の確立にご尽力されました。またその間、東日本大震災の際には、連合ボランティアのベースキャンプを整えるためにいち早く被災地へ向かい、熊本地震の際にも現地で陣頭指揮をとるなど活動を牽引されたことは、皆さんご承知のとおりです。本当に残念でなりません。
 有志によるお別れの会もコロナの状況により、しばらく後になろうかと伺っています。この場で謹んで、哀悼の意を表し、全員で黙祷を捧げたいと思います。

( 黙祷 )

 では、ここから中央委員会冒頭のご挨拶を申し述べたいと思います。
 本日の中央委員会では、「2021春季生活闘争 中間まとめ(案)」のほか、連合「ジェンダー平等推進計画」の取り組みに関する審議、連合運動の基盤強化に向けた「新制度移行に係る作業部会」答申の特別報告など予定しています。すべてオンライン上での開催となりますが、活発なご審議をよろしくお願いいたします。

2021春季生活闘争について

 コロナ禍の影響は今なお見通せない状況にありますが、これまでに引き出された回答は、平均の水準そのものは昨年を下回るものの、各組合の懸命な交渉の結果として、2014年以来の賃上げの流れを断ち切ることなく、そしてここ数年にわたる分配構造の転換、すなわち中小の賃上げが大手を上回る、あるいは有期・短時間・契約等労働者の時給アップ率が全体平均を上回るという、その傾向を維持しています。また、足もとのテレワークに関わる問題や、働き方改革、ハラスメント対策など、多岐にわたる課題への対応に関しても成果を獲得しています。

 一方で、コロナ禍の影響を大きく受けている業種・業態においては、賃上げ要求を見送らざるを得なかった組合も少なくありません。私たちは、当該分野における各組織が展開している、将来に向けた展望を確保するための懸命な取り組みを、しっかりと支えていかなければなりません。そして、雇用と生活のセーフティネット確立に向けて、政府による施策の後押しを継続するとともに、各種支援策が途絶えることのないよう引き続き対応を求めていかなければなりません。

 いずれにしても、この間のそれぞれの組織の真摯な取り組みに改めて敬意を表するとともに、残り4割の後続の交渉強化につなげていくこと、そしてその成果を社会全体に広げていくことが重要であるということを改めて強調しておきたいと思います。

 そして、私たちがめざす「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組みとも大いに関わる問題として、今夏の最低賃金審議は大変重要です。見えない感染リスクと闘いながら職場の第一線で働き続ける多くの仲間の切実な思いです。
 1-3月期のGDP成長率は戦後最大の落ち込みとなっていますが、落ち込んだ消費マインドを引き上げ、日本経済を再生していくには、すべての働く者の生活不安を払拭することが不可欠です。最低賃金の引き上げは、社会安定のセーフティネットを促進するメッセージともなり得るものです。2年連続で引き上げ額が低位に据え置かれる事態は何としても避けなければなりません。先進国の中で大きく引き離され、埋没した水準から脱却しなければなりません。
 本日、夕刻に田村厚生労働大臣への要請を行い、これらのことを強く訴えてまいります。

これからの運動を展望する

 私たちは、コロナの禍(わざわい)、このコロナ禍と闘い続けてもう1年半近くになります。連合の第16期は、大半の月日がそのこととともにあったということになります。
 多くの働く仲間が、様々な困難に直面しながら、今この瞬間も、私たちの命とくらしを支えています。あるいは、家族のために、そして社会のために、懸命に働いています。そして、組合役員の皆さんは、組合員の声や悩みに正面から向き合い、今できることを地道に取り組んでこられたことと思います。
 すべての皆さん方の、大変なご苦労とご奮闘に、心より敬意を表したいと思います。

 皆さんのご協力で進めてきた連合の総対話活動・第2弾は、おかげさまで本日段階で残すところ15構成組織、12地方連合会まで来ました。コロナ禍における現場の苦悩や組合活動の難しさなど、それぞれ状況や思いを語っていただき、今後に向けた多くの気づきについて、意見交換をしてまいりました。

 「働く」ことが私たちにとっていかに大切なことであるのか、コロナ禍で誰もが実感しているのではないかと思います。それは、私たちの生活の糧のもとであることのみならず、自己実現の機会であり、夢や意欲、生きがいにも通じるものです。
 30周年を契機に打ち立てた連合ビジョン、そのコアは「働くことを軸とする安心社会」の考え方です。労働の尊厳に誰よりも価値を置く私たちだからこそ、こだわりを持って追求しているのです。

 コロナ禍で、わが国は多くの問題点、社会にひそむ様々な不条理を思い知ることとなりました。いずれも、「働くことを軸とする安心社会」をはじめとした私たちの理念と政策が実現していれば、こんなことにはならなかったはずだとの思いを強くすることばかりです。
 まず、なんといっても雇用の問題です。わが国の脆弱なセーフティネットの機能強化をはかり、パート・有期・派遣などの雇用形態や「曖昧な雇用」で働く仲間、あるいは女性、学生、外国人など、コロナ禍で深刻な影響を受けた人々が、安心と希望を持って働き、くらしていくことができるようにしなければなりません。
 そして、不安定な雇用で働く仲間の多くが女性であることに加え、在宅勤務が増加する中で家事・育児の負担が女性に偏っていること、深刻化するドメスティック・バイオレンスなど、コロナ禍で多くの女性が苦境に立たされています。そうした中での女性差別発言には各方面からの非難が相次ぐなど、ジェンダーに関わる問題意識は少しずつ醸成されてきているとはいえ、まだまだ私たち自身の意識改革も含めて、具体的な実践を積み重ねていかなければなりません。

 そして、国としての感染症対策の不十分さという形で改めて露呈した医療・介護の構造的問題をはじめ、バブル崩壊以降のわが国の経済社会の背景にあった新自由主義思想や行き過ぎた自己責任論によってもたらされた多くの問題を反転させていくためには、抜本的な税財政改革が不可避です。
 ここで私が強調したいことは、これだけの厳しい状況を経験しながら、それでもこうした様々な気づきを活かせないようでは、いよいよわが国は、後戻りのきかない、深刻な危機を迎えてしまうということであります。
 ワクチンが広く国民に行き渡れば、やれやれ良かったね、のど元過ぎれば熱さを忘れるであってはならないということです。コロナ禍での気づきを今後の社会づくりに活かし、反映していくこと、今こそ、この問題意識を活かしていかなければならないのです。

 そして、私たち自身も「新しい運動様式」へ挑戦していかなければなりません。
 連合は今年3月、社会運動に関する意識調査を行いました。概要は既にご存知と思います。社会運動への参加意向を世代別にみると、10代が他の世代に比べて最も高いという結果でありました。「若い世代は無関心」などといったこれまでの指摘は、もはや当てはまりません。一方で、デモンストレーション型やボイコット型の運動に対する印象は、決して良いものとは言えないようです。
 この間、コロナ禍の中で、運動・活動も大きく制約を受けました。リアルの、アナログの取り組みの大事さ、貴重さを、長年の経験を持つ年代層は身にしみて感じています。私も、その良さは取り戻していかなければならないと感じています。組合員が集まっての対話、決起集会、デモといった、労働組合が大切にしてきた手法、あるいはそこでの価値観は、より良い社会を求めていくうえで、揺るぎない力を持っていると確信しています。そのことを世代を超えて体感し実感できるようにしていくことは私たちの務めであると思います。
 一方、こうした労働組合が培い誇りにしてきた運動の力を引き続き大切にしていきながらも、デジタル技術も活用して、団結や連帯のかたちの幅を広げ、より多くの人とつながり合い、寄り添っていく、そういったツールを活用することも、これからの労働組合の力として、発展させていくことが必要です。
 連合の登録人員は2015年から7年連続で増加しています。これを未組織の方々の新たな気づきに発展させ、さらに社会へ広げ、すべての働く仲間をまもり、つながり、集団的労使関係の拡大と追求を通じて新たな活力を創り出していく取り組みにしていかなければなりません。労働組合の意義と労使関係の重要性を知る私たちこそが、先頭に立って力強く牽引していくことが重要です。

 そして世界を見渡すならば、ミャンマーや香港など、民主主義、労働組合権が危機にさらされている国や地域があります。オンラインでつながり、ITUC(国際労働組合総連合)の仲間とともに連帯し、支援を重ねていかなければなりません。同時に、足もとに目を向け、ILOの中核的労働基準の批准はもとより、わが国自体の民主主義の力を立て直していくことも、私たち自身の課題として進めていかなくてはなりません。

 そしてあらゆる差別のない、多様性が尊重され、互いに認め支え合う共生社会づくりを進めるために、連合第16期の「まもる・つなぐ・創り出す」、この運動軸に確信を持ち、今期の残り約4ヵ月を、連合・構成組織・地方連合会が引き続き一丸となって、すべての働く者・生活者の先頭に立って運動を牽引していこうではありませんか。

政治について

 4月25日に国政の補選・再選挙で、3つの選挙の投開票が行われました。当該地方連合会の仲間の皆さんにおかれましては、コロナ禍のもとでの取り組み、大変お疲れさまでした。
 今年の秋までには衆議院総選挙、そして来年は参議院と国政選挙が続きます。次期総選挙は、コロナ禍という国家的危機を克服し、安心で持続可能な社会を展望することができるのか、「命とくらしを守るニューノーマル」を実現できるのかが問われる重要な選挙となります。そして、現政権に対峙する、働く者・生活者の期待に応え得る、もう一つの選択肢の確立は多くの有権者が望んでいることであります。左右の全体主義とは明確に一線を画した中で、一方の新自由主義的路線とも異なる、良識ある多くの有権者の受け皿が求められています。
 現在、立憲民主党・国民民主党とともに、雇用のセーフティネット、すなわち、生活保障、教育訓練、再就職・就労支援のマッチングをパッケージにした仕組みの策定を進めているところです。それらの政策の実現を含め、連合がめざす「働くことを軸とする安心社会」の実現には、働く者・生活者の立場にたった政治勢力の拡大をはかることが極めて重要です。
 二大政党的体制の一翼を担う勢力の伸長を果たし、再び緊張感ある政治体制を実現するためにも、目前に迫った次期総選挙、そして来年の参議院選挙に向けて、連合組織一丸となって取り組みを進めていかなければなりません。
 政治の無策から社会の発展が妨げられるようなことが繰り返されてはなりません。私たち自身がその影響力を行使して、ニューノーマルを実現していかなければなりません。そのための基盤づくりに向けて、組織が一丸となって取り組んでいくことの重要性を改めて訴えておきたいと思います。

おわりに

 コロナ禍の難局を、希望ある未来へ変えていく、本日の中央委員会がその契機となるよう活発なご審議を再度お願い申し上げ、冒頭の挨拶といたします。
 皆さん、ともに頑張りましょう!
ありがとうございました。

以上