会長挨拶

 
2019年12月3日
第81回中央委員会 会長冒頭挨拶

日本労働組合総連合会
会長 神津 里季生

 会場の皆さん、おはようございます。ご多忙の中、第81回中央委員会にご参集いただきましたことに、感謝いたします。

台風・豪雨災害に対する取り組み

 台風19号をはじめとするこの間の台風・豪雨災害に関して触れておきたいと思います。
 この間、東北、関東、東海の各地域で連合の多くの仲間による救援ボランティア活動が展開され、冷え込みが厳しさを増す中にあっても活発に取り組んでいただきました。連合本部のボランティア派遣団は11月30日までの取り組みとし、大変数多くの方々のお力をいただきました。地方連合会によっては引き続きボランティア活動を継続しています。心より敬意を表したいと思います。後ほど「一般活動報告」の中で報告がありますが、地方ブロックあるいは地方連合会単位など地域の実情に応じて様々な工夫をしていただきながら、構成組織とともに全国で活発な取り組みが展開されてきたところです。
 また、各地でカンパ活動が展開され、構成組織・地方連合会をはじめ多くの組織・個人の方からカンパにご協力をいただいています。誠にありがとうございます。
 一日も早い復旧・復興に向けて、連合全体で支えていくことを改めて確認しておきたいと思います。

「分配構造の転換につながり得る賃上げ」に取り組む2020春季生活闘争

 さて、本日の中央委員会では、2020春季生活闘争方針(案)などの議案を審議・確認いただきます。
 10月24日の第1回中央執行委員会で「基本構想」を提起し、その後の中央討論集会や各種委員会等での議論、11月21日の第2回中央執行委員会における方針「案」としての確認を経て、本日の中央委員会で議案として提起している次第です。

 この方針案が掲げるのは、「分配構造の転換につながり得る賃上げ」です。65年にわたる私たちの春季生活闘争の歴史において、過去の枠組みのみにとらわれることなく、新たな運動を展開していくことが求められています。

 足元では、世界経済は今年に入り成長率が低下し、そこに加えて米中の通商問題が暗い影を落とし、わが国の経済にもすでに影響が及びはじめています。緩やかな回復が続いていた成長はここにきて停滞感を見せています。闘争方針案の議論過程においても、業種業態によっては大変な厳しさを増しているとの報告がありました。国民の多くが将来不安を抱いてくらしている中で、勤労者世帯の消費行動も慎重な動きが続いています。
 しかし、だからこそ私たちは広く社会に向けて強調しなければなりません。この6年間、私たち連合が、思いを一つにして、それぞれの交渉努力の集積として実現してきた賃上げの流れを決して止めてはならないのです。むしろ、組織の内外に賃上げのうねりを広げ、社会全体のものとしていくことが重要です。労働組合の有無にかかわらず、一人ひとりの働きの価値が重視され、その価値に見合った処遇が担保されなければなりません。
 私たちは「生産性三原則」、すなわち①雇用の維持・拡大、②労使の協力と協議、③成果の公正な分配、がいかに重要な概念であるかを知っています。働く者の生活を向上させ戦後の経済を浮揚させてきたのは、そのことを多くの労使が共有してきたからです。しかしそれはまだ残念ながら世の中の一部にとどまっています。「生産性」という言葉自体に多くの誤解がつきまとっている状況すらあるのです。
 「生産性三原則」は、雇用の安定・労働条件の維持向上と、生産性向上とは好循環の関係にあることを示しています。そしてそれは、わが国における賃金決定メカニズムとしての春季生活闘争と密接不可分の関係にあるものです。その価値に対する認識を日本全体に拡げていかなければなりません。

 そしてその際、「賃上げ」も「働き方改革」も、不合理な「取引慣行」の是正がカギとなることを強調しておきたいと思います。私たちはこれまで以上に「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」に一体的に取り組むことで、社会全体の生産性向上を促し、成果の適正な分配につなげていくことが重要です。
 各方面から経済界に対して指摘がされている内部留保の積み上がりもこの点との関わりが大きいのではないでしょうか?原資が一部に滞留していることが経済の好循環の妨げになっているのではないでしょうか?この点をさらにクローズアップしていくことが必要です。

 それらの主張を支える基盤として、労使関係の構築を基本とし、その基本となる労使コミュニケーションを如何に根付かせていくかという点が極めて重要であります。そしてその重要性を組織内外にアピールし、力強く牽引すべきは、私たち自身であることを、この場にお集まりの皆さん全員と共有したいと思います。そしてそのためには本日確立される方針を、まずは組織の隅々にまで浸透させていかなければなりません。機関役員の皆さん方を軸にした組織活動の点検と合わせて取り組んでいただくことをあらためて要請いたします。
 そして、本方針で掲げるところの「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組みを、明確な定義とともに、広く社会全体にアピールし、賃上げを促していかねばなりません。月例賃金にこだわり、賃上げの流れを継続・定着させることに加え、中小組合や有期・短時間・契約等で働く方々の賃金の「格差是正」の取り組みの実効性を高めるためにも、働きの価値に見合った賃金の絶対額にこだわって取り組んでいきたい、そのことを申し述べておきたいと思います。

労働組合の存在がすべての取り組みの土台

 さきほど生産性三原則に言及するなかで労使コミュニケーションの重要性について触れましたが、春季生活闘争をはじめ、働く者・生活者を取り巻く様々な課題を克服していくうえで、集団的労使関係の確立と拡大が何より重要であることを改めて強調したいと思います。
 労働組合があってはじめて集団的労使関係が生まれ、働く者の主張が形を伴い、権利が保障され、生活が守られ、やりがいと希望をもって働き続けられる環境の整備につながるのです。
 「やはり労働組合が必要でしょ?」「労使関係がなければ問題は解決しないでしょ?」ということを、その重要性をよくわかっている私たち一人ひとりこそが、もっと頻繁に、粘り強く、あまねく社会に問いかけていくことが欠かせないのです。
 2020年は「働き方改革関連法」が本格的な施行を迎えます。「時間外労働時間の上限規制」の中小企業への適用、「同一労働同一賃金」への対応など法令遵守はもちろんのこと、有期・短時間・契約・派遣等で働く仲間の処遇改善などは、労働組合があればこそ働く者の立場からの改善に結びつけることができるものです。私たちは、公務・民間、企業規模、雇用形態にかかわらず、個々人のニーズにあった多様な働き方の仕組みを整え、安心・安全で働きがいある職場の構築に向けて先頭に立って取り組んでいくことが求められます。
 同時に、働くかたちそのものが大きく多様化している今日、普通に雇用されているかたちだけをみていては、すべての働く者を守り、社会全体の安心を確保していくことはできません。一人ひとりの多様性を包摂していく中で、集団的労使関係の確立と拡大をはかり、これを社会の隅々にまで広げ、社会的うねりを起こしていくことが必要です。
 そのためにも、「1000万連合」実現への取り組みを連合・構成組織・地方連合会が一体となってしっかり継続・加速していくとともに、2020年10月以降の(仮称)「1000万連合NEXT」に向けたこれからの議論に、積極的に参画いただきたいと思います。そして、職場やくらしを良くするためのすべての取り組みの土台は労働組合にある、社会にとって「労働組合が不可欠」であるということを、強く訴えていこうではありませんか。

政治状況に関して

 次に、政治状況についても、この場を借りて触れておきたいと思います。
 10月4日からの第200臨時国会の直前、9月30日に野党共同会派が結成されました。以降、様々な国会質疑をはじめとして、一定の存在感を発揮していることは評価したいと思います。しかし、重要なことは、国民の目にどこまでそのことが映っているかということです。長い間のバラバラ感からの反転の第一歩として、さらに深く有権者の思いとつながっていくような、心に響く実績を積み重ねていくことを期待します。
 なお一部で、立憲民主党・国民民主党の合流の動きに関して、報道を含めて取りざたされています。二大政党的運営を理想とする私たちからすれば究極的には望ましい姿とも言えますが、このことが、まちがっても再びバラバラ感・ガタガタ感を招来することとなってはなりません。共同会派に向けた動きのなかで私から要請してきたことは、現時点においても依然としてキーポイントであると思っています。すなわち、「お互いの立場を尊重しつつ、丁寧にものごとを進める」ということです。このことを引き続き求めておきたいと思います。

 一方で、次期衆院選に向けた候補者調整の協議が始まりつつあります。年明け早々に解散・総選挙という報道もある中、衆院選は常在戦場です。連合としても、選挙区における候補者調整の促進と地方連合会との連携強化について、両党に求めてきたところです。
 当たり前の話ですが、政治の主役は主権者たる国民です。全ての選挙区において、多くの国民が納得できるような明確な選択肢が示されなければなりません。私たち有権者が、投票所という舞台に喜んで足を運べるような選択肢が必要なのです。
 私たち連合は、働く者・生活者こそが主役の社会を求めています。そのことに全力をつくす候補者を、各選挙区で一本化し明示いただくことを、引き続き、両党に強く求めていきたいと思います。

社会対話の重要性について

 アットマークれんごうですでにニュースとして流しましたし、また報道でご覧になった方もおられるかと思いますが、11月29日、先週の金曜日に、私と逢見会長代行、相原事務局長とで、安倍総理と会談の場を持ちました。かつての政労会見の形式と正確には異なりますが、ときの総理大臣と直接意見を交わし「社会対話」を行うものとして年に1、2回行っているものであります。

 率直に申し上げれば、民主党政権が下野して以降の長期政権との向き合い方は、一筋縄でいくものではありませんが、いずれにしても是々非々での対応を基本に向き合ってきています。先日の会談でも、「桜を見る会」などの問題で国民の疑惑が高まっている状況について「総理ご自身をはじめ関係する方々から、国民に向けて明快なご説明をお願いしたい」ということも含めて、思うところを率直に発言したところです。そして本題としては、私たち働く者をめぐる日頃の課題認識や、新たな連合ビジョン、社会保障・教育・税制に関する政策構想、ILOへの対応などをテーマに取り上げて意見交換いたしました。
 ここでは特に、「賃上げが世の中全体に波及していない。働き方改革も『仏つくって魂入れず』になりかねない。打開していくためには労使コミュニケーションと取引慣行の是正が大きなカギを握っている」という点について強調してきたことを申し述べておきたいと思います。
 三者構成主義に基づく観点も含めて、社会対話の重要性は高まっていますが、現政権の対応は率直に言ってまだら模様です。一方ではそれぞれの地域で、産業で、行政・経済界や多様なステークホルダーと、直面する社会課題の解決に向けて、地方連合会を中心とした対話が重ねられてきています。私たちの声で、新たな活力を創り出していかなければなりません。

私たちが未来を変える

 連合は結成から丸30年を迎えました。11月12日には30周年記念シンポジウムを開催し、この場にいる多くの皆さんにもご参加いただいたかと思います。
 この1年は、新たな「連合ビジョン」や基盤強化に向けた改革パッケージを踏まえ、具体的な実行にうつしていくことになります。誰もが安心してくらし働くことができ、男女平等をはじめとして一人ひとりが尊重された「真の多様性」が根づいた、誰一人取り残されることのない社会へ、私たちで未来を変えていく運動を進めていきます。地域での支え合い・助け合いを促進する新しい「ゆにふぁん」活動なども活用し、連合本部と構成組織・地方連合会が引き続き意思疎通を深めながら、皆さんと力を合わせて、社会に広がりのある運動にしていきたいと思います。

 ローマ教皇が先日来日をされました。ローマ教皇は広島・長崎や被災地をご訪問され、世界各地で目の当たりにしている多国間主義の衰退に警鐘を鳴らすとともに、「核兵器の保有」に関して、「安全保障への脅威から私たちを守ってくれるものではない」「核兵器の保有自体が倫理に反している」と述べられ、核兵器の廃絶と平和な世界の実現に向けて、すべての人が一致団結するよう呼びかけました。ローマ教皇が、カトリック教徒の比率自体は極めて低いにも関わらず日本を訪問されたのは、唯一の核兵器被爆国である私たち日本人に対する強いメッセージに他なりません。
 連合、原水禁、KAKKINの3団体で取り組む「核兵器廃絶1000万署名」へのご協力をあらためて要請します。取り組みをさらに強化していただきたい、そのことを申し述べておきます。

 本日の中央委員会、限られた時間ではありますが、皆さんの活発な論議をお願いし、冒頭の挨拶とさせていただきます。ともに頑張りましょう。ありがとうございました。

以上