会長挨拶

 
2018年10月11日
第78回中央委員会 会長冒頭挨拶

日本労働組合総連合会
会長 神津 里季生

 第78回中央委員会にご参集いただきました皆さん、おはようございます。
 それぞれご多忙の中お集まりいただきましたことに、心より感謝申し上げます。

 昨年10月4日、5日の第15回定期大会から約1年が経過いたしました。この中央委員会が、連合第15期の2年間のまさに折り返し地点です。残された課題と今後の取り組みの方向性に触れながら、数点にわたり所見を申し述べたいと思います。

 この1年は、様々な意味で、従来の常識では考えられない事態が目立った1年ではなかったかと思います。

自然災害について

 まずここ最近の事柄としては、大きな被害をもたらした自然災害の発生についてです。6月の大阪府北部地震、7月には西日本豪雨災害、そして9月には関西圏をはじめとした各地での記録的豪雨、重なるように起きた北海道胆振地方の地震と、引きも切らぬ自然災害の発生は、日本の各地に大きな爪痕を残していったのであります。
 お亡くなりになられた方々に、改めて衷心よりお悔やみ申し上げますとともに、被災した方々、今もって避難をされている方々に心よりお見舞い申し上げます。

 被災地では、多くの働く仲間が復旧・復興活動に取り組んでいます。また、地方連合会が中心となって、連日のボランティア支援活動が展開されました。心より敬意を表したいと思います。さらに、構成組織・地方連合会をはじめ、多くの組織・個人の方から、カンパ金を頂いております。誠にありがとうございます。
 そして私たち労働組合とはいわば兄弟の関係にある全労済の状況にも触れておきたいと思います。それぞれの被災地において、迅速・適切な給付を実行すべく、東日本大震災以来の非常事態宣言のもと、全国からの動員により、懸命な調査活動を展開しています。同じ協同組合の仲間である労働金庫におかれても、柔軟な窓口対応を各地ではかってこられたと伺っています。
 一方では、発災から7年半が経過した東日本大震災の被災地では、復興・再生の歩みが進められているものの、いまだに数万人単位の被災者が避難生活を余儀なくされています。避難生活の長期化に伴う心身のケアなど、きめ細やかな支援が引き続き求められています。一昨年の、熊本県を中心とする九州地震についても、早期の復興・再生に向けて取り組みを前進させていかなければなりません。

 これら自然災害への対応を考えるとき、私たちは、もはやこれまでの常識の延長線上でものごとを考えるわけにはいかない、そういう時代に既に入っているということを強く感じます。連合は引き続き、地方連合会を軸とした連携により、被災地に寄り添った取り組みを進めていくとともに、国が果たすべき防災・減災対策は十分であったのかという観点からも、大規模自然災害への対応を求めていきたいと考えています。

政策実現に関して

 「これまでの常識の延長線上でものごとを考えるわけにはいかない」と、今、申し述べたわけですが、このことは、日本の社会全体が、様々なテーマで突きつけられていることではないでしょうか。そもそもの国のありようをどう考えていくのか、という大きな問題もまた、従来の常識の延長線上では成り立ちえないこととなっていると、私には思えてなりません。

 私たち連合は、力と政策を標榜し、29年前に大同団結してできた労働組合のナショナルセンターです。
 この29年間は、基盤となる労働組合としての日常的な取り組みとともに、社会の不条理に立ち向かっていく運動、地域に根差した運動を積み上げてきた29年間です。様々な制約はあっても、成果を向上させ、連帯の絆を確実なものとしてきた29年間です。もちろんまだまだ課題は山積ですが、向かうべき道ははっきりしています。

 一方、政策の実現のためには、それを可能とするための立法と行政の対応が不可欠であることは、言うまでもありません。行政府に対しては、様々な要請活動と日常的な粘り強い働きかけを営々と重ねてきています。
 しかし、先ほど来申し述べているように、従来の常識の延長線上では、日本社会は立ち行かないのです。働く者の生活の根幹に関わるような事柄の改善をはかるためには、そして、立ちはだかる困難な状況を克服していくためには、法改正や新法の制定等、立法府の力が不可欠なことは言うまでもありません。
 だからこそ私たち連合は、政治に正面から向き合っているのです。しかし、その政治がますます、私たちの手から遠いものになってしまっているという危機感を、私は率直に表明せざるを得ません。
 連合の700万人の組合員は、基本的に普通の国民・市民の目線を持っている集団です。そこにもここにもいる有権者の意識そのものなのです。だからこそ、縁あって役員となった方々には、先ほど申し述べたような意味合い、政治の大事さについての理解を拡げるべく、ともすれば無関心や忌避感に覆われがちな職場の仲間に、政治の大切さを素朴に訴え続けていただいているわけです。
 そのもとで私は、重大な懸念と疑問を表明せざるを得ません。昨今の政治情勢のままでは、世の中全体が、「どうせ変わらないさ」とか、「とりあえずこのままでいいんじゃないか」とか、そんな雰囲気に流されていってしまうのではないでしょうか。

 国民世論を子細にみるならば、そのような「仕方がないか」というあきらめにも似た感情の一方で、ここに至るまでの一強政治の弊害については、極めて率直に認識されていることも事実です。
 それも当然です。特に先の国会、第196通常国会は、問題だらけの国会であったと言わざるを得ません。一強政治の弊害を3点申し述べておきたいと思います。
第1は、強引かつ一方的な法案審議の進め方に象徴される独善的な姿勢です。国民のために少しでも良い法律にしようという与野党の合意形成機能はどこへ行ってしまったのでしょうか?野党の質問や追及に正面から答えないまま、法案採決を強行するという、相変わらずの光景が繰り返されたのです。
 弊害の第2は、真実を究明する姿勢の欠如です。前代未聞の公文書の改ざん、あるいは隠蔽といった事態が相次ぎ発覚し、関係者の発言の食い違い等が露呈している森友学園・加計学園の問題や、防衛省の日報隠し等々、疑惑のオンパレードであったにも関わらず、根っこのところの真実は明確にならないままです。国民の7割程度が怪しいと思っているのは各社の世論調査でも明らかなとおりです。
 弊害の第3、ある意味これが最も深刻で、重大な危機に直接つながる事柄だと思いますが、この国の20年先、30年先のグランドデザインが示されないまま、放っておかれているという問題です。目先のつじつま合わせに終始しているのです。

 このような状況の責任が一強政治の当事者にあることはもちろんですが、それを許してしまっている野党にあることも直言せざるを得ません。現政権・与党に、「20~30年後のこの国の姿をどう描くか」というグランドデザインが欠けているのであれば、野党にとっては、本来は大きなチャンスのはずです。それぞれの支持者のみならず、無党派と呼ばれる圧倒的多数の人たちに対して、しっかりとした将来像と道筋を提示し、情熱をもって訴えかけることが求められています。そして一方で、信頼と実績を積み重ねることによって地道な組織づくりを進める、そのような着実な軌道が不可欠なのです。

 そして来年は、統一地方選挙と参議院選挙が重なる12年に一度の極めて重要な年です。6年前の参議院選挙は野党の大敗でしたから、野党が一強政治の打破という大きな目的のもとに、一致団結をすれば、相当に大きな挽回ができるポジションにあるのです。
 しかし、なかなか野党の力合わせの姿がみえてきません。一強政治はよくないとする多数の国民世論をひきつけるようなものに、現時点では全くなっていません。力合わせの姿とともに候補者擁立が進まないと、一強政治打破に向けた実感は生まれてきません。
 政治の構造は、依然として私たちの手からも、変化を期待する国民世論からも遠くにあるままなのです。

 もちろん、あきらめは私たち連合には許されません。私たちが諦めてしまったら、諦めや刹那主義がこの世を覆い、「自分さえ問題なければそれでよい」、「今がよければそれでよい」、そういう国になってしまうと認識しなければなりません。
 先の沖縄県知事選は、連合沖縄の奮闘とオール沖縄の輪が力を発揮したことで、推薦候補の玉城さんが激戦を勝ち抜きました。この勝利は、米軍基地や日米地位協定の問題はもとより、様々な観点で重要な意義を持つものであることは言うまでもありません。特にここで強調しておきたいのは、中央集権的な一強政治の弊害を打ち破るためには、それぞれのオール地域、オール沖縄であり、あるいはオール北海道であり、オール東京であり、それぞれごとの地域における同志の結集が不可欠であるということです。そして、それぞれの地域の働く者・生活者が、本来の「主役」として一致団結することが、何よりも重要であるということです。その中核に各地方連合会があります。その基盤を強めること、それを全国各地で成立させることにより、野党全体の力合わせを促していかなければならないということです。

 なお、本年5月に決定した第25回参議院選挙の基本方針にもとづき、立憲民主党・国民民主党との連携について、この間、意見交換を行ってまいりました。その結果、与党を利さないことなど、その基本姿勢については意識の共有をはかることができました。引き続き、各選挙区の候補者擁立のあり方などについて、論議を深めて参りたいと思います。

 いずれにしても、働く者・生活者の立場に立った政策実現をあきらめることは、私たちには許されません。いかなる政治状況にあっても、働く者が主役としての対応を愚直に貫いていかなければなりません。

憲法改正について

 さてこの場では、具体的な政策に逐条的に触れる時間的余裕はありませんが、憲法改正に関わる問題については、特に一言触れておきたいと思います。
先般、自民党・安倍総裁が3選となり、憲法改正への強い意欲が改めて表明されています。
 憲法問題について連合は、三役会ベースでの勉強会とヒヤリングを重ねた上で、6月28日の中央執行委員会において、現時点における三役会としての認識を報告いたしました。憲法改正の国民的な合意形成をはかるためには、国会における十分な議論と、それを踏まえたわかりやすい内容の提起および国民的な議論の基礎となる国民への丁寧な情報提供が不可欠です。しかし現状はそれが全く不十分です。連合三役会としては、「一定の時期を念頭においた憲法改正ありきで拙速な議論が進められることは認められず、まずは国会で国民的な合意形成につながる丁寧な議論を十分に行うことを求めていく」との認識を確認したところです。
 普通に考えるならば、この数年のなかで安倍総裁が標榜するような憲法改正が実現するということはあり得ないのでしょうが、普通ではないのが現在の政権であること、そして野党の力合わせの姿が脆弱なこと等から、国民世論の不確かな状況のままに、なし崩し的な国民投票に移行することも大いに懸念しなければなりません。
 将来に禍根を残すような憲法改正を見過ごすわけにはいきません。そのことを申し述べておきたいと思います。

外国人材の新たな在留資格の創設について

 また、いわゆる政府の「骨太の方針2018」に、即戦力となる外国人材を幅広く受け入れるための「新たな在留資格の創設」が盛り込まれ、入管法改正等の対応が取りざたされています。これまで政府は「専門的・技術的分野」に限って外国人材を受け入れるという方針でありましたが、これを大きく転換する具体的な論議が、今後急速に本格化するものと思われます。新たな在留資格の全容はまだ明らかにされていませんが、すでに報道等で示されている制度の骨格は、専門性や技能ではなく、もっぱら特定業種の必要性に着目して受け入れをはかる、人手不足を補うための、その場しのぎの内容になっています。日本に来て働こうとする外国人労働者やその家族の、人権やくらしのことが十分に考えられているとは到底言えません。政府は、秋にも予定している臨時国会に入管法改正法案を提出するとしていますが、我われは、あくまでも働く者・生活者の視点から、この受け入れ制度の問題点などについて広く世論喚起をはかって対応していきたいと思います。
 この問題も政権・与党の提示している内容は弥縫策なのです。今必要なことは、人口減少、急速な超少子高齢化と技術革新が進展する中で、我が国の20年から30年後のあり様をどのように描くのか、というグランドデザインなのだということを重ねて強調しておきたいと思います。

 また一方では、政府の「未来投資会議」において、「生涯現役社会の実現に向けて、意欲ある高齢者に働く場を準備する」等のテーマ設定がなされ、検討が開始されます。その一環として、「未来投資会議」のもとに「政労使協議会」が10月5日に設置され、連合からは私が参画することとなりました。「未来投資会議」の論議が働く者の声をしっかり踏まえたものとなるよう、積極的に対応してまいる所存であることを申し述べておきたいと思います。

すべての働く者のための取り組みとして

 いずれにしても、政治の動きの如何に関わらず、我われはすべての働く者のための取り組みを、労働組合としての根源的な取り組みを、加速していかなければなりません。

 2018春季生活闘争では、「底上げ・底支え」「格差是正」と、すべての働く者の立場に立った働き方の実現に向かって、賃上げ要求のすそ野が広がりました。構成組織・地方連合会の踏ん張りにより、昨年以上に底上げ春闘の実をあげていただきました。
 そして来季の闘争に向けて、11月30日に開催される次回中央委員会にて闘争方針を確認すべく、議論を本格化させてまいります。この数年間の「賃上げ」の流れを継続・強化するとともに、いかにして「底上げ・底支え」「格差是正」を社会全体に波及させていくか、皆さんの積極的な議論をお願いしたいと思います。

 最低賃金については、2018年度の目安を受けて、各地方の地域別最低賃金審議会での審議の結果、実に23県で目安を上回る引き上げが行われ、とりわけDランクは16県すべてがプラス1円ないし2円の引き上げとなりました。底上げに邁進された各地方連合会の皆さんのご尽力に改めて敬意を表するものであります。

 そして働き方改革に関してです。ご承知のように関連法は、6月29日に成立しました。罰則付の時間外労働の上限規制や、雇用形態間における不合理な格差の解消に向けた同一労働同一賃金の法整備など、連合が求めてきた事項が実現する点はおおいに評価できます。しかし、「高度プロフェッショナル制度」という、労働基準法上の労働時間規制を適用せず、長時間労働、過労死・過労自殺の危険性を増すような制度が、法案から削除されることなく創設されることは、極めて遺憾であります。

 今後私たちは、大事な内容については実効性を担保させ、危険なものは歯止めをかけていかなければなりません。労働政策審議会の連合側委員を中心とした連携を軸としながら、しっかりと取り組んでまいる所存です。 

 そして、法律が整備されても、それが各職場で活かされなければ意味がありません。このことがいよいよ問われてくるのであります。
 連合はまずその第1弾として、長時間労働是正の取り組み、大キャンペーンを展開して参ります。まずは自分たちの足元を照らすとともに、世の中全体の運動としていかなければなりません。 労働組合の有無にかかわらず、すべての職場において、より良い働き方の実現をめざし、36協定の適切な締結をはじめとする職場での取り組みを、労使で徹底していくことが重要です。
 「Action!36」と銘打ってこの取り組みを展開していきます。
その一環として、3月6日を、日本全体が認知する「36(サブロク)の日」としてまいりたいと思います。連合発の、しかし連合だけではなく、長時間労働是正、過労死・過労自殺ゼロを願うありとあらゆる人たちの結び合う運動として、「36(サブロク)の日」を一つのシンボルとして、大きなうねりをおこしていこうではありませんか。
 「Action!36」の取り組みを全員で支えていただきたい。心よりお願い申し上げます。

組織拡大について

 そしてこの取り組みの基盤となるものが、集団的労使関係の構築であります。労働組合に組織されていない8割の働く仲間に、確実に36協定の締結を促進し、どの企業、どの職場であっても、当たり前に労使による話し合いの場がある、対話が確保されているという環境を確保しなければなりません。
 我われが目標とする2020年の「1000万連合」の達成に向けて残り2年、重点的な取り組みとして連合全体で確認している「いわゆる非正規労働者の組織拡大」、そして「子会社・関連会社、取引先企業の組織化」さらには「未組織企業の組織化」という3つを中心に、さらなる組織拡大に全力を挙げていかねばなりません。2020年までの組織化対象と目標数について、現在集約を進めており、今月18日の中央執行委員会で確認する予定にしています。連合本部、構成組織、地方連合会が一体となって、「Action!36」とも連動した取り組みを是非よろしくお願いしたいと思います。

 組織を取り巻く問題には様々な観点での危険予知も必要です。ここ数年の状況のなかで仲間を失った事例も明らかになっています。せっかく三位一体の努力で15年ぶりに700万連合と言えるまでにこぎつけておきながら、一方での危険予知・コミュニケーション不足が不測の事態を招くことが繰り返されてはなりません。連合本部はもとより、それぞれの持ち場立場においてその反省を忘れることなく点検を重ねていかなければなりません。

ベルコ闘争に関して

 そしてここでは最後に、積極的な意味での、世の中に発信する意味での危険予知について一言紹介を兼ねて申し述べておきたいと思います。
 連合としてこの間注力をしてきているベルコに関わる闘争についてです。
 葬祭業をなりわいとするベルコという企業は、正社員が約30人、社員の大半にあたる約7,000人は、雇用責任逃れのため「業務委託」か「(業務)委託先の代理店で雇用させる形」で契約し、実質的に支配介入しています。こんな企業が許されるはずがない、私たちには常識です。しかしこんなことが司法の世界の理屈では、放っておくと認められてしまうのです。勇気を奮って労働組合を設立した仲間が、解雇を不当としてベルコ本社を相手に訴えた闘いにおいて、地裁での敗訴にひるむことなく、昨日、札幌高裁に控訴がなされました。別途審理が進められている北海道労働委員会の命令を期待しつつ、今一度運動の強化と世論喚起をはかっていかなければなりません。
 このように業務委託形式を悪用し、実質的に労働者として働かせていながら雇用責任を代理店に押しつけ、本社はあらゆる労働関係法規を免れる仕組みが認められてしまえば、日本の健全な雇用社会は成り立たなくなってしまいます。情報労連と連合北海道が力を振るって切り拓いてくれているこの闘いを、さらに全体の力で、世に警鐘を乱打する闘いとしてステージアップしていかなければなりません。そのことを強く訴えておきたいと思います。

連合30周年に向けて

 本日の中央委員会では、後半年度の主な活動計画を中心とした議案を確認します。来年2019年は、時代の節目であるとともに、連合結成30周年、国際労働機関(ILO)の創設100周年、G20・L20の日本初開催など、労働関係においても重要なイベントの相次ぐ年です。そして統一地方選・参院選で働く仲間をなんとしても政治の場に送り出していく闘いの年です。極めて重要な後半年度です。
 運動方針に掲げる「次の飛躍へ、確かな一歩を」歩むためにも、しっかりとした心合わせをお願い申し上げ、冒頭の挨拶といたします。
 ともに頑張りましょう!ありがとうございました。

以上