紙つぶて

 
2018年11月26日
大事な時間

 大みそかの紅白歌合戦をご覧になりますか。熱唱と暮れる年、そして、手元のお酒が絶妙に混ざり合い、一人感傷に浸るもまたよし。一方、私は年越し直前なのに初耳のヒット曲とお初にお目にかかる歌手を前に、必死に巷に追いつく大事な時間となります。時間を惜しむ受験生からは、なんと呑気なとの声が聞こえてきそうですが、同じ学ぶ身でも、海外から日本を訪れる留学生となると、大事な時間の意味が少し変わってきます。
 現在、日本で働く外国人労働者は百二十八万人。うち二割はアルバイトに就く留学生。大いに学び、日本の文化に触れ、新たな架け橋が期待されるところですが、日本語学校の看板を掲げながら、仕事の斡旋を目的とする不届きな業者の被害に遭う若者もいます。技能実習生も技術移転という制度本来の趣旨に沿わない仕事や最低賃金以下で働く実態など、劣悪な環境に置かれ、違法状態を強いられる事例が後を絶ちません。彼ら彼女らには、日本の年末はモノトーンにしか映りません。早急の改善が必要です。
 授かった尊い人生。かけがえのない大事な時間を軽んじる権利は誰にもありません。私たち一人ひとりも多文化との共生に向き合う時代です。日本で働き暮らす誰もが、新年に期待を寄せる彩り豊かな年の瀬を迎えるには、丁寧な対話と社会の合意が欠かせません。

2018年11月26日の東京新聞・中日新聞夕刊に掲載