紙つぶて

 
2018年8月20日
大人の宿題

 夏の日の何げない情景。なぜか今でも思い出します。友達と海に出かける早朝の生暖かい空気と集合場所のがらんとした商店街。年上のいとこの速球に負けた突き指の痛さと田舎の田んぼの青さ。何より「涼しいうちにね」の母親の声も右から左。遅々として進まぬ学校の「宿題」。今でも火事場の何とかを期待しがちな私の姿を見つけたら母親はなんと言うでしょう。
 さて、今を生きる私たち「大人の宿題」の進み具合も気になります。巡り合った彼や彼女が愛する人を思い、父さん・母さんが子供の将来を考え、そして一国のリーダーが国民の幸福を願い行動するのは当然のこと。ただし「自分たちだけが良ければそれでよし」となると話は全く別です。
 性差によらず一人ひとりの可能性を広げてこその日本で、明るみに出た入学試験での男女間の点数操作。一方、自国を保護すると、釣り上げた米国の高い関税が巡り巡って自国民の生活と世界経済に跳ね返るのも自明の理。保護されるべき当然の権利が保護されず、自由であるべきはずの貿易が保護の名の下に閉ざされる現実。独りよがりの幸福追求の姿が、この夏の暑さを増幅させます。
 夏休みもそろそろ終わり。火事場の何とかは子供の頃の私だけにして、周りに幾つも転がる「大人の宿題」を進めましょう。次代の希望につながる夏の情景を残すためにも。

2018年8月20日の東京新聞・中日新聞夕刊に掲載