7つの絆

 

大阪北部を震源とする地震に関するQ&A

地震関連ワークルールQ&A
Q1
<解雇・雇い止め>
勤務先の工場が地震で倒壊し、会社も倒産してしまい、退職せざる得なくなりました。まだ支払われていない賃金や退職金はどうなるでしょうか。
A1

労働者が勤務先に対して有する未払いの賃金などの賃金債権(退職金規程があるときには退職金を含む)は「先取特権」として保護され(民法308条、306条)、倒産手続の中では優先的に保護する規定が定められています。以下の未払い賃金の立替払制度を参考にしてください。また、雇用保険の受給手続きは、最寄りのハローワークにご相談下さい。

<大阪労働局管轄ハローワーク>
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/000212026.pdf

【解説】

未払い賃金立替払制度の活用
 勤務していた会社が倒産し、賃金が支払われないまま退職した場合には、「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃確法)に基づき、国から未払い賃金の立替払いを受けられる制度があります。
 立替払いを受けることができるのは、①1年以上事業活動を行っていた事業者が倒産した場合で、かつ、②労働者が倒産について裁判所への申立て等又は労働基準監督署への認定申請が行われた日の6ヶ月前の日から2年の間に退職した場合です。
 事業者の倒産という要件については、破産、特別清算、民事再生、会社更生の法律上の倒産はもちろんのこと、中小企業については、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、賃金支払能力がない状態である場合にも、事実上の倒産として要件を満たすこととなります。この場合には、労働基準監督署長の認定が必要となりますので、労働基準監督署に認定の申請を行って下さい。
 立替払いの対象となる未払い賃金は、労働者の退職日の6ヶ月前の日から立替払い請求日の前日までに支払期日が到来している定期賃金と退職金です。ボーナスや解雇予告手当、実費弁償としての旅費等は含まれません。また、未払い賃金の総額が2万円未満の場合には対象とはなりません。立替払いが受けられる額は、未払い賃金額の8割です。ただし、退職日の年齢が30歳未満の場合には上限88万円、30歳以上45歳未満の場合には上限176万円、45歳以上の場合には上限296万円と上限額が設けられています。
 未払い賃金立替払制度についての手続きの詳細やご相談については、最寄りの労働基準監督署または独立行政法人・労働者健康安全機構にお問い合わせください。
http://www.johas.go.jp/tabid/687/Default.aspx

Q2
<労災保険>
今回の地震により組合員が工場で作業中に怪我をしました。労災保険給付の適用はありますか?
A2

作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にあることにより被災したものと認められる場合には、業務上の災害となります。阪神大震災や東日本大震災に際して発生した災害についても、地震に際して当該災害を被りやすい業務上の事情(危険)があったとして、多くが業務上との認定を受けました。

【解説】

 労災保険は、「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」の「業務災害」に適用されます(労働者災害補償保険法第7条)。「業務上」と認定されるには、「業務遂行性」と「業務起因性」の双方が必要です。
 まず、業務遂行性について、このケースでは、組合員が工場で作業中であり、労働者が労働契約に基づく事業主の支配・管理下にありますので、「業務遂行性があるもの」と判断されます。
 問題は「業務起因性」の判断です。「業務起因性」とは、業務または業務行為を含めて労働者が労働関係に基づき事業主の支配・管理下にあること(業務遂行性)に伴う危険が現実化したものと経験則上認められることをいいます。今回の地震では、阪神・淡路大震災や東日本大震災と同様に、通達「熊本県熊本地方を震源とする地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」(平成28年4月15日付基保発0415第1号)が出されています。
 この通達では、①被災労働者が、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にあることにより被災したものと認められる場合には、業務上の災害として取り扱うこと、②業務上外等の判断に当たっては、天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること、とされています。
 なお、労災保険給付を請求する際に「事業主証明」「診療担当者の証明」が必要となりますが、今回の地震においては、請求にあたって事業主や医療機関の証明が受けられなくても請求書は受け付けている旨、厚生労働省のホームページに掲載されています。詳細は各県労働局にお問い合わせください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121837.html

【事例】

事例1 作業現場でブロック塀が倒れたための災害
 ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

事例2 作業場が倒壊したための災害
 作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。

事例3 事務所が土砂崩壊により埋没したための災害
 事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等 不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあ った事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。

事例4 バス運転手の落石による災害
 崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。

事例5 工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や 避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害
 業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該避難行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。

事例6 トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害
 高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。

Q3
<休業手当>
地震で事業場が直接被災し、休業した場合、賃金・休業手当等の取扱いはどうなるでしょうか。
A3

 休業に至った理由によって、賃金や休業手当の支払義務が発生する場合としない場合があります。例えば工場が地震で損壊して全く操業できないといった不可抗力の場合には、「使用者の責めに帰すべき事由」とはいえないので、会社に、休業手当の支払義務は発生しません。ただしこれは労働条件の最低基準を定める労働基準法の取り扱いです。労働協約や就業規則で別途、賃金や休業手当等について定めている場合は取り扱いが異なります。労働組合としては、団体交渉・労使協議で休業手当等の支払を求めることが大切です。また、雇用調整助成金の活用も検討してください。

【理由】

 労働基準法26条では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合は、平均賃金の6割以上の休業手当の支払いを使用者に義務付けています。ただし、天災地変などの不可抗力により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、休業した場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」には当たらないと考えられます。

【解説】

 民法上の原則では、債権者(使用者)の責に帰すべき事由(「故意、過失または信義則上これと同視すべき場合」)により労働義務を履行できなくなった場合は、労働者は反対給付である賃金全額の請求権を失わないとされています(民法536条2項)。例えば「会社から自宅待機を命じられた」場合は、一般的には債権者(使用者)の判断で労務の受領を拒否している(勤労の意志があるにもかかわらず自宅待機させられている)と解釈できるので、賃金の全額を請求できると考えられます。

<民法第536条2項>
 「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の責任を免れたことによって利益を得たときには、これを債権者に償還しなければならない。」