懇談会全景
連合は1月27日、経団連との懇談会を都内で開催し、「春季労使交渉をめぐる諸課題について」をテーマに意見交換を行いました。
冒頭、筒井会長は、「近年の物価上昇や人手不足の深刻化などを背景に、賃金引上げに対する社会的な関心とその必要性がかつてないほどに高まっている。『人への投資』としての賃金引上げの重要性を労使で深く共有して取り組んできた結果、賃金引上げの力強いモメンタムは2023年を『起点』として2024年に『加速』し、2025年には『定着』が実感できる状況になった。今年は、この力強いモメンタムをさらに定着させるべく、経団連は社会的責務としてその先導役を果たしていく。
こうした決意を盛り込んだ『2026年版経労委報告』をとりまとめた。今年はベースアップ実施の検討を『賃金交渉のスタンダード』と位置付け、各企業に対し積極的な検討・対応を呼びかけていく。その実現には、約7割の働き手を雇用する中小企業における賃金引き上げの持続可能性を高めることが不可欠である。賃金引き上げ原資の安定的な確保には、中小企業による生産性の向上やサプライチェーン全体での取り組み、政府や地方自治体による支援に加え、『賃金は上がっていくもの』と『適正な価格転嫁と販売価格アップの受入れ』の2つの考え方を社会的規範として浸透させていく、社会全体における環境整備が欠かせない。今月15日には経済三団体長の連名で『パートナーシップ構築宣言』の趣旨の徹底と実行の推進とともに、未宣言の企業に参画を求める旨の共同要請を全会員企業へ発出した。
連合とは課題認識やめざしている方向性はほぼ一致しており、とりわけ、賃金引上げの力強いモメンタムの『さらなる定着』が必要との経団連の基本方針については、認識の共有度合いが非常に強いように感じている。
本日の意見交換を通じて、互いの理解をより深め、協調しながら取り組んでいくことを願っている。」と述べました。
芳野会長は、「先日、経団連より公表された『経労委報告』では、賃上げを『人への投資』と明確に示し、『ベースアップ実施の検討を「賃金交渉のスタンダード」と位置付け』た。日本が置かれた状況を踏まえ、賃上げモメンタムの定着に向けた労使間の基本的認識に、ほぼ齟齬はないものと受け止めている。二度とデフレマインドに戻さない「ノーモア・デフレマインド」を労使の共通言語にしたいということを強く申し上げておきたい。そのためには、賃金も物価も上がること、さらに実質経済成長率や物価上昇率を踏まえながら実質賃金上昇率を加味して、5%以上の賃上げを継続していく社会を実現する「賃上げノルム」をつくっていくことが重要である。
昨年は、2年連続で5%以上の賃上げを実現した。3年連続で5%以上の賃上げは当然に実現せねばならない。そして、その果実は、大企業の労使だけが享受するのではなく、中小・小規模事業者でも同様に実現しなければならない。そのためには、一部に利益が温存されるのではなく、適正な取引と適切な価格転嫁が伴わなければならない。
経団連と連合は、女性活躍推進に対して軌を一にしていると言っても過言ではない。その一つに、選択的夫婦別氏制度の導入がある。別氏を認めないことが職場や社会に多くの弊害をもたらしており、もはや制度上の問題のみならず、人権問題の一つであることは明らかである。しかしながら、あたかも制度上の不備であるかのように、この問題を矮小化し、旧姓への法的効果を付与する案が政府から出される状況に深い失望を禁じ得ない。政府が進める旧姓の通称使用拡大では国際社会で通用せず、人権尊重の要請にも応えられないことは明らかである。改めて、選択的夫婦別氏制度の早期導入に向けて、ともに連帯し取り組みを加速させていきたい。」と述べました。
続いて、連合による「2026連合白書」、経団連による「2026年版 経営労働政策特別委員会報告」の説明の後、意見交換において、連合側は「人手不足に関する課題認識」「付加価値の適正分配」「適切な価格転嫁・適正取引」「地域別最低賃金の引き上げ・特定最低賃金の活用」「多様な人財の活躍」「選択的夫婦別氏制度の実現」「組合組織化の重要性」などについて提起しました。
経団連側からは「労働分配率を勘案した人的資本投資」「企業の価値創造」「労働生産性の向上」「地方・中小企業の継続的賃上げ」「男女間格差是正・選択的夫婦別氏制度の導入」「労働移動・リスキリング」「労働時間法制の柔軟化」などについて意見が示されました。
意見交換を終え、まとめのあいさつで芳野会長は、「賃上げ交渉については、2023年には「転換点」、2024年は「ステージ転換」、2025年は「定着」として取り組みをすすめてきており、今年はまさしく正念場である。昨年は中小組合の賃上げ率が4.65%と、5%に届かなかった。取適法などを職場に周知し、2026春季生活闘争では、中小労組も5%台を実現したい。結果にこだわって、相場形成を含め取り組んでいく。連合としては、話し合いをベースに、対話を重視して取り組みをすすめていく。
本日は、選択的夫婦別氏制度の導入も含め、女性活躍についても労使で共通認識を持てたことは大きな意義があると考える。職場での一人ひとりの活躍、そしてグローバルスタンダードをめざすうえでは、世界からの遅れを取り除いていかなければならないし、そうしなければ、企業発展も、処遇改善もできないと考える。労使で力を合わせて、今後も取り組みを強化していきたい。」と述べました。
筒井会長は、「本年は経労委報告において、ベースアップを強く打ち出した。従業員のエンゲージメントやモチベーションを引き上げるうえで、ベースアップが重要であり、『人への投資』の意味合いを強く有するファクターである。さらに、コーポレートガバナンスの観点でも、より従業員に配分していくうえで株主にも理解を得やすい在り方として、ベースアップがあると考える。
連合のデータにもある通り、近年の5%を超える賃上げ率のうち、7割程度がベースアップによるものである。ベースアップが、賃金引き上げの力強いモメンタムをけん引してきている事実がある。ベースアップを通じて、賃上げをさらに定着させていきたい。
実質賃金を上げるためには、物価が安定する必要がある。2%程度の物価安定が必要であるという従業員や生活者の目線が必要だ。労務費が転嫁され、賃金が上昇する好循環を形成するためにも、2%程度の物価上昇が必要である。政府・日銀には安定的な物価上昇の実現を求めていきたい。
中長期的課題として、社会保障制度改革、選択的夫婦別氏制度での連帯行動、AIと労働の関係性に関する議論、外国人労働者政策についての考え方などについても、労使が議論し、連携を深めていきたい。
未来協創型労使関係を象徴する場がこの懇談会である。今後の交渉の中でも、本日の空気感を伝播して浸透させていきたい。」と述べ、懇談会は閉会しました。