2025年11月25日午後、首相官邸で「政労使の意見交換」が開催された。
連合から芳野会長、神保事務局長が出席し、芳野会長から「賃上げの重要性と基盤整備等について」意見表明を行なった。
<芳野会長の発言>
〇適切なタイミングで、政労使の意見交換の場を設けていただいたことに感謝申し上げる。
〇政府の「企業が賃上げできる環境を整備し、実質所得を担保する」という考え方は、連合も共通の認識である。2025春季生活闘争では、2年連続で5%台の賃上げが実現したが、中小組合の賃上げ率はいまだ4%台にとどまっている。また実質賃金が3年連続でマイナスとなる中で、暮らしにゆとりが出てきたと感じる国民は少数である。就業者の約9割は雇用労働者であり、日本経済を成長させるには、賃上げの波が全国に波及し、多くの人が生活向上を実感できる必要がある。
〇中央の政労使と、地域における地方版政労使会議を今年度も継続し、物価上昇を1%程度上回る賃金上昇をノルムとして定着させ、再びデフレに後戻りすることがないよう全力で取り組み、日本経済を確固たる巡航軌道に乗せたい。
〇賃上げの環境整備にむけて、来年1月1日から施行される取適法の周知・徹底は大変重要である。労務費を含む価格転嫁はいまだに5割程度であり、道半ばの取り組みを徹底するとともに、中小企業が助成金や支援策を経営改善に結びつけられるように相談活動の充実が必要である。
〇3年以上にわたる物価高は賃上げの効果を相殺している。速やかな物価高対策とともに、2%水準の物価安定を求める。また、物価高対応の「重点支援地方交付金」は、地方公共団体において賃上げ環境の整備に資する形で活用されいるかを検証し、すべての地域における積極的な利用を促していただきたい。
〇春季生活闘争で高水準の回答が引き出されている一方で、医療・介護・障がい福祉・保育分野の賃上げは十分とは言えない。現場を支えるすべての労働者の継続的な賃上げが可能となるよう、次期報酬改定を待たずに、さらなる施策の実行とその財源を確保する必要がある。
〇また、株主を重視しすぎるコーポレートガバナンスも見直していくべきである。これまで経営資源が人への投資に十分に配分されず、その結果として日本の賃金水準が国際的に低迷している。人的資本投資に関する情報開示の充実をはかるとともに、中長期的な企業価値の向上に向け、人への投資、研究開発投資、設備投資を促すコーポレートガバナンス・コードに改訂する必要がある。
〇最後に、依然として過労死等がなくならないことや、総実労働時間の高止まりなどを踏まえれば、「心身の健康維持と従業者の選択」が前提にあったとしても、過労死ラインである時間外労働の上限規制や裁量労働の拡大などの規制緩和を行うべきではない。柔軟な働き方は現行法で既に対応可能であり、今行うべきは、「時間外労働を行わずとも安心して働き、暮らすことのできる賃金の確保」と、真の「働き方改革」実現につながる労働時間の確実な縮減である。
出席した閣僚から、それぞれの取り組みについて報告した。
<各大臣からの発言については、@RENGO参照 ※組織内留に注意>
高市首相は、最後に本日の意見交換を踏まえ次のように述べた。
〇労使の皆様からは、『政府は、賃上げを事業者の皆様に丸投げせず、継続的に賃上げできる環境を整備する』という高市内閣の方針への御理解を賜った。
〇この方針に基づき、先週末の21日に、官公需を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、中小企業・小規模事業者への政府全体で1兆円規模の支援を行うこととし、基金を活用して、賃上げに取り組む中小企業・小規模事業者による成長投資支援を抜本的に強化すること、また、重点支援地方交付金による賃上げ税制を活用できない中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備のための推奨メニュー事業の強化も含む賃上げ環境整備のための施策を抜本的に強化した形で総合経済対策を閣議決定した。その裏付けとなる補正予算の早期成立を図っていく。
〇また、強い経済の実現に向けて、日本成長戦略本部を立ち上げた。来年夏に向け、『賃上げ環境整備に向けた戦略』を含む成長戦略の策定を指示した。その中では、先ほど話が出た中長期的な企業価値の向上に向け、人への投資、研究開発投資、設備投資を促す、『コーポレートガバナンス・コードの改訂』にも着手する。
〇その上で、こうした高市政権の方針や具体的な取り組みを地方の皆様にもお伝えし、全国隅々まで浸透させるために、すべての都道府県で『地方版政労使意見交換』を実施する。
〇本日、御出席の労使代表の皆様には、こうした政府の取り組みも踏まえ、30年以上振りに5%を超える高水準となっている賃上げを確かなものとして定着させるために、一昨年、昨年の水準と遜色のない水準での賃上げ、とりわけ、物価上昇に負けないベースアップの実現に向けた御協力を心よりお願いする。もちろん、政府もしっかりと頑張ってまいるので、これからもよろしくお願いしたい。
以上