連合ニュース 2025年

 
2025年03月21日
全国中小企業団体中央会と連合との懇談会を開催
~共同談話をもとに、両組織が同じ目的を持ち、力を合わせて取り組むことを確認~
全国中央会と連合の共同談話
 連合は3月21日(金)、全国中小企業団体中央会(「以下、中央会」)との懇談会を都内で開催し、「労務費の価格転嫁と人手不足などの課題について」をテーマとして意見交換を行いました。
 冒頭、両組織を代表して連合から芳野会長、中央会から森会長が、それぞれ挨拶しました。
 
<芳野会長あいさつ>
 「中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備のための相互連携に向けた共同談話」を両組織で事前に準備し、双方の組織内に展開している。この共同談話を締結する取り組みは今年で3回目となる。今回の共同談話では、新たに「お互いの組織の強みを活かした相互連携」を加筆しており、今後、さらなる連携をはかる契機にしていきたい。
 連合は、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」のスローガンのもと、2月から多くの組合が要求書を提出し、先週のヤマ場では第1回回答集計を発表した。内容は前年を上回る回答を引き出しているうえ、中小組合も33年ぶりの5%台であり、新たなステージの定着に向けてよいスタートが切れた。今後、中小企業や労働組合のない職場を含め、社会全体にこの流れをつなげていきたいと考えている。そのためには、企業規模間の格差是正にむけた適切な価格転嫁の徹底が不可欠である。大手企業は自らが価格転嫁に努める必要があり、中小企業は臆することなく発注企業に価格交渉を申し入れて頂きたい。
 また、今後の地方創生に向けて、それぞれの地域で、地域の経済活力を通じて暮らしていくためには、地域の力を存分に発揮できる環境づくりが大切である。そのためには、「笑顔と元気のプラットフォーム」を活用し、産官学金労言の幅広い関係者が連携を深めていく必要がある。
 
<全国中央会・森会長あいさつ>
 先日開催された「政労使の意見交換」で、労務費の適切な価格転嫁、下請法改正の早期実現等、連合と全国中央会の意見は、かなりの部分で同じ方向であったことを嬉しく思っている。「物価上昇に負けない賃上げ」を実現するためには、「構造的な価格転嫁の実現」をはかっていくことが必要となる。
 「政労使の意見交換」では、中小企業の持続的な賃上げに必要な下請代金法・下請振興法の改正と運用強化、「ものづくり補助金」「省力化投資補助金」等の生産性向上対策の継続的な実施、データに基づく地域の実態に合った最低賃金の決定等を要望した。とりわけ、価格転嫁の推進については、「中小対中小」「中小対小規模事業者」での価格転嫁が適正に行われることが、賃上げと成長の好循環のためには重要である。
 各地のブロック会議において、経営者のマインドのリセットを求めているが、環境整備や支援施策の実行に併せて、経営者の意識改革は、これまで以上に推進していく必要があると考えている。そのためにも、連合とは労働者側と使用者側とで立場は異なるが、各団体の立場から同じ目的をもって取組みを進めていきたいと考えている。本日の懇談を今後の私共の取組みの一助にしたい。
 
 その後、中央会から、令和6年度地方版政労使会議の状況について、連合から、2025春季生活闘争の回答集計結果や地方版政労使会議の開催状況、「笑顔と元気のプラットフォーム」、過半数代表制、集団的労使関係の強化・構築とフリーランス支援などについて報告しました。
 
 このあと、中央会の各副会長(北海道、埼玉県、東京都、愛知県、大阪府、香川県)から意見が出されました。北海道からは「木材業では従業員の生活が非常に苦しいので賃金アップはすべきだが、物価高は従業員だけでなく企業も苦しい。」埼玉からは「オフィス家具の卸売業では、価格転嫁が進んでも利益率が一定なため、賃金を上昇させるだけの余力があるわけではない。」東京からは「労務費の価格転嫁が課題のため、価格転嫁推進東京大会共同宣言を行った。」と報告を受けました。愛知からは「貸しおしぼり業では、取引単価が小さいが、7%から9%の賃上げができた。」大阪からは、「連合大阪やJAM、UAゼンセンなど、中小企業が多く加盟する産業別組織で中小企業の補助金活用の説明をさせていただき、連携が進んだ。」香川からは、「県外に進学した大学生の就職先の80%が県外である。」など、地域実態に基づいて意見が述べられ、それをふまえて意見交換が行われました。
 
 連合からは、「人手不足は、少子高齢化の中で大企業といえども中小企業と同様に進んでいる。中小企業は国の補助金等を活用して対応を進めることが重要。良いサービスには値がつくということも訴えていきたい。」、「連合は連合白書に賃上げに向けた基盤整備について、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配、適切な価格転嫁・適正取引について記載し、そのためのチェックリストを作成した。」、「連合大阪でDX時代における労組の役割というテーマで地域活性化フォーラムを開催し、異なる立場の参加者より様々な意見が出された」などの意見が出されました。
 
 最後に、懇談会を締めくくるにあたり森会長は、「本日は、地域・業界の実情をお聞きし、労務費を始めとするコスト増加分の価格転嫁は一定程度進んでいるものの、まだまだ厳しい状況にあるということを改めて確認できた。その一方で、経営者自身がデフレ時代のマインドを切り換えて、価格転嫁力を強化する動きがあることも感じた。そのためにも、中央会関係者が先頭に立って、経営マインドの切替えが進むよう努力していきたい。引き続き、賃上げと成長の好循環の実現に向けて、中小企業のために必要な事項について政府・国会等に要望してまいりたい。
 価格転嫁の実現には、労使の協力が欠かせない。本日の「共同談話」をもとに、地域の事情や問題意識を共有し、このことをブロックの会長会議や地方版政労使会議などを通じて全国各地へと展開していきたい。これからも、労使の意見交換を継続し、構造的な価格転嫁の実現とそれを原資にした「攻めの経営」が促進されるよう、力を合わせて取り組んでいきたい。本日の貴重な懇談会に対して深く感謝申し上げる。」と述べました。
 
 芳野会長は、「連合としては2024 春季生活闘争の流れをこの 2025 にも継続するため取り組みを強化している。その中で特に中小・小規模事業者の賃上げが、今年のポイントである。また、企業が発展していくためには健全な労使関係が必要であり、経営の計画や方針を組合員や社員に説明し、職場の課題を取り上げることが企業の発展や利益にもつながる。これからも労使で企業の発展に向けて協力をして参りたい。
 賃上げのための原資確保には労務費を含む価格転嫁の取り組みが非常に重要であり、労使交渉において自社の取り組みや、調達部門の状況を確認しながら、価格転嫁を進めることが、今春季生活闘争の重要な課題の 1 つである。
 また、業種問わず、特に若い人たちが都心部や海外に出ている理由を掘り下げていくことが重要である。地方における性別役割分業意識が女性の生きづらさや生活しづらの要因にある。その課題についても取り組みを強化していきたいので、引き続きご指導いただきたい。」と発言しました。
 
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  • 全国中央会・森会長
  • 連合・芳野会長
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