連合ニュース 2021年

 
2021年09月15日
2021社会保障制度に関する構成組織・地方連合会政策担当者会議(2日目)をオンライン開催
コロナ禍で困窮する学生の実態を報告する坪田総合局長
 連合は9月14日、オンラインツールを活用して、「2021社会保障制度に関する政策担当者会議(2日目)」を開催しました。この日も、「多様化する生活課題と重要性を増す生活支援施策」を副題とし、障害者の教育と仕事、居住保障など、従来の社会保障制度では十分に対応できていない課題の共有と取り組みの強化を目的に開催。構成組織・地方連合会から約50名が参加しました。
 
 冒頭、連合北海道の坪田伸一総合政策局長より、「ほっかいどう若者応援プロジェクト」の取り組みについて報告と課題提起をいただきました。コロナ禍による雇用への影響や困窮する学生が暮らし・学び・コミュニティの3つの危機に直面したこと、地域のつながりを活かしながら、北海道大学をはじめとする道内の大学での食料品の無償配布を行うプロジェクトの内容などを説明いただきました。坪田総合局長は「協同組合のネットワークを活かし、たすけあいの輪が広がった。報道が功を奏し、池に落ちた1滴のしずくが波紋のように広がるがごとく、地域の皆さんの心に火をつけ、さまざまなレベルでの困窮学生支援につながっていると感じる」と述べました。
 
 続いて、株式会社LITALICO研究所の野口晃菜所長に、「障害のある人の教育と仕事」と題して、インクルーシブ教育や合理的配慮の提供、障害のある人の就労状況について講演いただきました。講演の冒頭には10個の質問に答えるという「ワーク」が行われました。参加者はワークを通じて、たまたま生まれた環境や属性によって、今の社会のままで労なくし恩恵・特権を得ているかを自分事として実感することができ、社会がマジョリティ仕様に作られていることや、なぜインクルーシブ(包摂的)な社会が必要なのかについて理解が深まりました。野口所長からは「インクルーシブな社会のためには、特に意思決定をする影響力のある立場にいる特権者が自分たちの特権性に気が付き、マイノリティ性の多い人たちも生きやすいように社会の構造を変えていく必要がある」と指摘がありました。
 
 次に、一般社団法人つくろい東京ファンドの稲葉剛代表理事より、居住保障のあり方について、コロナ禍における生活困窮者支援の現場から講演いただきました。稲葉代表理事は、住宅支援の取り組みやコロナ禍での食料支援の現状について説明した上で、住居を喪失した生活困窮者の支援において、生活の拠点である住まいの確保はすべての人に保障されるべき人権であるという理念に基づき、まずは安定した住まいの提供を最優先で行うべきという「ハウジングファースト」の考え方の重要性を強調しました。また、住まい・仕事・社会的なつながりのために電話(番号)が不可欠であることから、スマホの無償貸与にも取り組んでいることも報告されました。稲葉代表理事からは、「コロナ禍で従来からの中高年単身男性に加え、若年層や女性、外国人のホームレス化が進んでいる。感染の拡大・長期化が貧困の拡大に連動している。民間賃貸住宅市場で住宅を確保できない人たちのために公的住宅の拡充が必要」との政策的な提言がありました。
 
 会議では、連合本部より、障がい者政策と居住保障について、最近の動向と連合の対応を報告し、参加者と情報を共有しました。

 最後に、佐保総合局長が、「新型コロナウイルス感染症拡大や人口減少・超少子高齢化により、様々な課題が浮き彫りとなっている。2日間で挙げたテーマはだれもが身近に起きうること。誰一人取り残されることのない包摂的な社会の実現に向け、構成組織・地方連合会と連携して、さらなる取り組みを進めたい」と2日間の会議をまとめました。
以 上
  • 特権の可視化について説明する野口所長
  • 生活困窮者支援の現場について講演する稲葉代表理事