オンラインでも白熱したディスカッションの様子
連合は9月6日、「年金積立金はだれのもの?シンポジウム~私たちの年金積立金、私たちが考える~」をオンライン形式で開催しました。構成組織・地方連合会、一般・マスコミなど200名以上の方にご参加いただきました。
冒頭、逢見会長代行が主催者代表挨拶を行い、「年金積立金は、もともと私たち働く者と企業が毎月納めている保険料であり、私たちが年金積立金に関心を持って考えていくことは大変意義深い。働く仲間である被保険者はもとより、資産運用や年金制度にかかわる多くの方々にも課題を共有化いただきたい」などと述べました。
続くパネル報告では、3名のパネリストからご講演をいただきました。
平野英治 GPIF前経営委員長は、「経営委員会の合議によって意思決定を行うことで、この間、一定の正当性は確保できたといえるのではないかと思う。基本ポートフォリオの見直しをめぐっては、資産運用の専門的な観点だけにとどまらず、国民の納得感や理解しやすさも重視しつつ議論を尽くして決定した」と振り返り、今後の課題として「ESG投資の位置づけをどうするか」「GPIFと厚労省との関係整理が必要」等を指摘しました。
上智大学の香取照幸教授(元厚生労働省年金局長)は、年金積立金における責任関係を整理し、「GPIF内部や位置づけが変わっても、厚労相は年金積立金の運用に関する責任から免れることはない」と強調しました。その上で、「経営委員会が担う機能や役割がモニタリング・ボードか、マネージング・ボードかということを明確にすれば、ボードメンバーも自ずと決まる」と述べました。
京都大学の川北英隆名誉教授は、公的年金における資金運用の意義を解説した上で、「資産構成割合(ポートフォリオ)には様々な組み合わせがあり得るが、公的年金としては先進国と新興国それぞれへの投資のあり方やESG投資の位置づけなどが検討すべき課題である」と指摘しました。特にESG投資(EとS)は「長期的に超過リターンが得られることを研究で実証したがリターンの幅は小さく、各企業の業績に吸収されうるとも考えられるなどさらに検証が必要である」と述べました。
続いて、「年金積立金に関する連合の考え方」について、佐保総合政策推進局長が「年金積立金は私たちの貴重な保険料であり、将来の年金給付の原資であることから、安全かつ確実な運用を堅持すべきことと、GPIFの経営委員会に保険料拠出者である労使代表が過半数を占めるよう配分することが特に重要だ」と訴えました。
ディスカッションでは、「公的年金積立金の運用のガバナンスの強化に向けて」をテーマにパネル報告で各パネリストから提起された論点を含めて熱い議論が交わされました。GPIFにおける意思決定機関としての経営委員会の役割、ESG投資におけるパフォーマンスの慎重かつ長期的な評価の必要性、年金積立金の基本ポートフォリオと国民のリスク許容度や分かりやすさとの関係、国民の納得感を得られる情報開示と透明性の確保の重要性など非常に多くのご示唆をいただきました。
全体のコーディネーターを務めた慶應義塾大学の駒村康平教授は、「年金積立金の最終的なオーナーは被保険者である。是非とも連合には被保険者代表として、国・GPIFと被保険者全体をよりよくつなぐコミュニケーションの一端を担っていただきたい」と締めくくりました。
最後に、石上副事務局長が「本シンポジウムが安心と信頼の年金制度の実現、年金積立金の安全かつ確実な運用につながるきっかけになることを願って締めくくりとしたい」とまとめました。
以 上