連合ニュース 2021年

 
2021年04月14日
改正育児・介護休業法案について審議が進む
~参考人質疑で井上久美枝総合政策推進局長が意見陳述~
参考人として意見陳述する井上総合局長
  2021年4月13日の参議院厚生労働委員会に井上久美枝総合政策推進局長(ジェンダー平等・多様性推進担当)が参考人として出席し、今次国会に提出されている改正育児・介護休業法案について以下を要旨とする意見を陳述しました。
 
 冒頭、女性(母親)の早期復職支援の観点から男性(父親)も育児休業を取得すること、また、女性だけが所得を失い、キャリアが断絶されるという育児休業のデメリットを被らないように、その同僚の男性も育児休業を取得することが重要であること、加えて無制限な働き方を前提とするいわゆる「男性中心型労働慣行」の変革が必要と発言し、以下の点を中心に陳述しました。
 
今回の主な改正点について
(1)主に男性を対象とする「出生時育児休業」について
 女性に比べて著しく取得が進んでいない男性の育児休業取得促進策として、また、年次有給休暇や配偶者出産休暇等が優先的に利用されている中で、選択肢の一つ。ただし、主に男性が対象となる「ポジティブ・アクションの考え方等に沿ったもの」とされており、男女平等の観点に留意することが重要。固定的性別役割分担意識や女性に偏る負担を解消するために、男性の育児参加を促すことが必要。
 
(2)休業中の就労について
 本来は休業を選択する以上、育児に専念できることが望ましく、休業と就労の線引きが曖昧になる、あるいは結果的に育児より仕事の優先を余儀なくされるなどの懸念が残る。労使協定の締結と労働者本人の同意が条件になっているとはいえ、仕組みが濫用されないよう、今回、事業主の措置として、「育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知」が義務付けされたことも踏まえ、政府から事業主に対する十分な周知と運用の徹底を求める。また、今回のことで他の休暇・休業制度に波及することのないようにすべき。
 
(3)有期契約労働者の取得要件の一部撤廃について
 有期契約労働者の取得要件のうち「引き続き雇用された期間が1年以上」を撤廃することは連合が継続して求めてきた内容であり、一歩前進。ただし、「子が1歳6ヵ月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」という要件が残り、女性労働者の半数が不安定・低賃金の非正規雇用という状況の中、育児休業が取得できなければ退職せざるを得ない。ただでさえ不安定な雇用を手放すか、出産を諦めるという究極の選択を迫られることになり、この要件も撤廃すべき。
 
(4)職場環境の整備、個別周知・意向確認等について
 事業主による職場環境の整備や労働者への個別周知を含む取得の働きかけの義務化、育児休業の分割取得化等は男女を問わず仕事と育児の両立に資するものと期待。なお、いわゆるケア・ハラスメントの防止措置の対象に、両立支援制度を利用していない場合の育児や介護に関するハラスメントも追加すべき。
 
(5)コロナ禍で厳しい状況の雇用保険財政について
 所得保障は財源も含めて検討すべきであり、育児休業給付の財源となっている雇用保険財政はコロナ禍の影響に対応するため極めて厳しい状況にある。現在、雇用保険から支出されている育児休業給付については、政府の「少子化対策」としてより一層充実させる必要があり、一般会計から支給されるべきだとの認識のもと検討することが必要。
 
その他、以下の点を陳述しました。
-単に取得率の向上を目的化することなく、労働者本人が安心して希望する期間(日数)を取得できるようになるきっかけとするためにも、「雇用均等基本調査」で男女別の育児休業取得期間を毎年調査し、実態を把握すべき。
-育児・介護休業法は、あくまでも雇用労働者に関わる「両立支援」であって、正規労働者に限った話になりがちであることに留意が必要。女性の場合、不安定・低賃金の非正規雇用に就いているケースが多く、コロナ禍においては、解雇・雇止めにあった女性の30%以上が再就職できないというデータもある中では、両立以前の問題。
-日本の育児休業制度について、2019年のユニセフの報告では、給付金などの支給制度を持つ出産休暇・育児休業期間の長さでは、日本の制度は男性で1位の評価を得ている。
-母性保護の観点から見ると、すべての女性労働者に母性保護を認め母性を理由とした差別を禁止するILO第183号条約が未批准。SDGsしかり、労働のグローバルスタンダードであるILO条約の批准に向けて早急に対応すべき。
 
 その後、福島みずほ議員や足立信也議員をはじめ与野党の議員と質疑を行いました。

以 上
  • 2021年4月13日(火)参議院厚生労働委員会
  • 井上総合局長をはじめ3名の参考人