連合ニュース 2021年

 
2021年03月12日
「全国中央会と連合との懇談会」を開催
中小・小規模事業者の経営基盤の強化に向け課題意識を共有
 連合は、2021年3月12日、全国中小企業団体中央会(以降、全国中央会)との懇談会を開催し、「コロナ禍における中小企業の課題について」をテーマに意見交換を行いました。

 冒頭、神津会長は、中小企業への支援施策について「中小企業の業態転換や事業再編を促す目的で新設される事業再構築補助金は、雇用のセーフティネットを担保し、失業なき労働移動の仕組みの構築が必要である」と述べ、「在籍型出向の取り組みについて全国、ひいては地域レベルでの全国中央会と連合の連携を願いしたい」と強調しました。2021春季闘争については「中小組合の交渉はこれから本格化を迎える。雇用を守る取り組みと賃上げの取り組みは、決して二者択一を迫られるべきものではない。このコロナ禍を逆バネにして、賃金も雇用も反転させていかなければならない」と述べました。
 
 森会長は、「中小企業・小規模事業者を取り巻く環境は、ますます深刻度合いを増している。全国中央会として、中小企業組合を起点とした中小企業・小規模事業者全体のデジタル化の推進、人材育成など、コロナ禍からの回復に向けた支援を行う。雇用と生活を守っている中小企業とそこに働く従業員のために、安心な社会をどう創り上げていくか、安心をどう広げていくか、労使一体となった取組みが問われている。本日の懇談を今後の私共の取組みの一助にしたい」と挨拶しました。
 
 両組織からの報告では、連合からは「中小企業の労働条件の改善に向けた取り組みについて」、全国中央会からは「中小企業の景況感、コロナ禍による影響」についてそれぞれ説明がありました。

 続いてコロナ禍における中小企業の課題、とりわけ「雇用を守るための在籍型出向制度の活用」と「その雇用を維持する中小企業を守るための補助金や助成金の活用」をテーマに意見交換が行われ、連合からは、「在籍型出向制度」を活用した雇用維持への支援のために、「地域在籍出向等支援協議会や産業雇用安定センターと連携することが重要」と述べ、また「労使団体・業界団体を通じた、仕組みの周知、受入企業情報の収集・開拓のために、『笑顔を元気のプラットフォーム』を活用した全国、ひいては地域レベルでの全国中央会と連合の協力が求められる」と強調しました。そして「中小企業の事業を守るための各種補助金や助成金が拡充・新設されているため、積極的な活用をお願いしたい」と述べました。

 全国中央会からは、「中小・小規模事業者への支援策の積極的な活用を通じて、デジタル化のための人材確保・育成に向けた連合と全国中央会の協力をお願いしたい。また、在籍型出向制度による雇用の維持については、組合員の人材情報を事業協同組合等の中小企業組合が収集し、その人材情報を産業雇用安定センター等に提供できるよう、円滑な労働移動に向けて支援と協力を行っていく。とりわけ、地域間において連合と全国中央会が情報共有することが大事であり、中央会としては、この後開催する理事会において、地域の代表に申し上げ、地方連合会との連携を前に進めていきたい」と述べました。

 また中小企業の雇用を守り事業を継続していくために「マークアップ率を上げていかなければならないが、日本はマークアップ率が欧米に比べて低い。ローコストを意識するあまり、中国へ依存している実態がコロナ禍で明らかになった。多少高くても日本でつくり雇用を守ることが必要と考える」と提言されました。それに対し、神津会長は「コスト削減、生産性向上は必要だが、本来の生産性向上とは、付加価値を得、配分することであり、労働力の削減による生産性の向上に終始してきたこともあり、いつの間にか世界とかけ離れてきた」と述べました。

 この懇談を通じて、在籍型出向の活用による雇用の維持や事業を守るための各種補助金・助成金の積極的な活用など、コロナ禍で長期化している需要の変化に対応した、事業の再構築に取り組むことの課題意識を共有しました。最後に、こうした取り組みを強化するためには全国中央会と連合がさらなる連携に努めることが重要であるとの認識のもと、「ポスト/アフターコロナにおける中小・小規模事業者の経営基盤の強化に向けた共同談話」に調印し、会を締めくくりました。
  • 連合 神津会長
  • 全国中央会 森会長
  • 懇談会の様子