連合ニュース 2021年

 
2021年02月25日
衆議院予算委員会公聴会で逢見会長代行が意見陳述
働くことを軸とする安心社会 ~With/afterコロナ時代のデザイン~ について意見陳述
2月24日、衆議院予算委員会において公聴会が開催され、連合から逢見直人会長代行が公述人として出席し、働く者の立場から意見陳述を行った。

コロナ禍で求められる各種施策やwith/afterコロナの時代でめざすべき社会像を中心に、働く者の立場から見た、わが国の経済・社会における課題ととるべき政策について以下の観点から意見陳述を行った。
(1)連合が考える「めざすべき社会像」、(2)市民社会における普遍的原理の実践、(3)コロナ禍における雇用・生活対策、(4)所得再分配機能強化と安定財源確保に向けた税制の抜本改革、(5)デジタル変革への対応、グリーンリカバリーの推進、(6)すべての世代が安心できる社会保障制度等の確立、(7)雇用の安定と公正労働条件の確保

意見陳述後に行われた、与野党の議員との質疑応答の概要は以下のとおり。(●:議員、○:逢見会長代行)
●コロナ禍で在籍出向や地方移住を推進する動きが出てきていることについて、見解を伺いたい。
〇在籍出向の送り出し企業と受け入れ企業とのマッチングが成立すれば、休業者を出さずに雇用を維持することができる。地方移住は、地域雇用の創出やテレワークによる生活の質的向上といった観点から、進めていくべきものである。
 
●法人税において租税特別措置により大企業の納税率が低くなっているが、政策減税についてどうすべきと考えるか。また、炭素税についても、税の平等性の観点を含めて見解は?
〇租税特別措置などの政策減税については、政策目的を達成しているかなど、その効果の検証とそれによる見直しを進めていくべきである。炭素税については、カーボンニュートラル実現に向けて国民各層で議論を深めていく必要があるが、一気に進めると関連する産業を中心に失われる雇用が生ずるため、ソフトランディングの手法を考えなければならない。
 
●例えばハローワークの窓口で労働相談をされている方々は1年契約で、契約が切れると一度辞めて、公募に申し込んで採用されると次の契約が結ばれる。そうやって10年近く非正規雇用で働いている方々がいるが、これは正しい雇用の在り方か?
〇非正規雇用の問題については、徐々に法整備が進んできた面もあるが、公務員は民間と異なる問題を有している。公務が適用除外とされる労働契約法やパート・有期法の趣旨が国家公務員・地方公務員制度へ反映されるようにさらに必要な法整備をはかる必要がある。
 
●コロナ禍による非正規雇用で働いている方が深刻な影響を受けているが、無期転換ルールのような出口側の規制以外にも、入口側の規制も必要ではないか。
〇過去には、有期雇用が認められる職務を限定する、あるいは無期雇用しか認めないといった入口規制も検討されたが、労働市場の情勢に鑑みて出口規制に力点を置いた法改正がなされた。パート・有期雇用のあり方については、法改正がもたらした効果も踏まえて議論がなされるべきである。
 
●シフト制で働いている方への支援の充実が図られたが、そもそもシフト制という不安定な労働形態に対する法律上の規制も必要ではないか。
〇サービス業では、曜日や時間帯による来客数の変動が大きく、パート・アルバイトで働く方がシフトを組んで変動に対応している。シフト制の方にも支援が届くようにすることは重要であるが、シフト制そのものについてはコロナ禍の経験も踏まえて慎重に考える必要がある。
 
●日本の社会保障は、企業に負担を負わせすぎであると感じている。現行の企業負担分は、国家が引き取るべきではないか。それは賃金水準にもかかわってくる。
〇ここ30年間を見ると、税財源を比較して労使で負担した社会保険料財源の割合が増えてきている。少子高齢化が進む中で、現役世代だけが負担するのが難しくなってきた背景があるが、その背景も踏まえ、税と社会保険料をうまく組み合わせていく必要がある。
 
●アジアにおいて看過できない人権侵害が複数発生している。陳述で指摘のあったILO中核条約の未批准の問題の重要性について改めてご見解を伺いたい。
〇日本は国内法令を修正してからでないと批准できないという閣議決定に長い間引きずられ、結果として国際社会から取り残される状況になっている。この2条約未批准により、貿易や投資の面でも日系企業が不利になる。国益にも関わる問題との認識が必要。
 
●コロナ禍でデジタル化の遅れと行政組織の弱体化が顕在化しました。この両面について、今後のあるべき方向性、最優先に取り組むべき課題について見解は。また行政の行き過ぎた合理化により生じているコロナ禍における影響は。
〇コロナ禍でわが国のデジタル活用の遅れが明白になったことに加え、保健所に代表されるように、公衆衛生を担う機関が機能縮小していた中で、コロナ禍でパンクした。デジタル化や行政の仕組みの見直しを今回を教訓に進める必要がある。また、真に必要な層への的を絞った緊急支援の体制の実現に向け、マイナンバーに所得情報をひも付け正確に所得を捕捉した上で、必要な給付と連携させる「給付付き税額控除」の仕組みが必要と考える。
 
●医療従事者への支援や雇用や生活のセーフティネットの再構築、不安定な雇用形態における格差是正等の観点から予算案に対してどのように評価しているか。
〇雇調整金の給付はリーマンショック時を大きく上回っており、低失業率に抑えている。ここで支援を緩めると、高失業社会に転換するリスクが大きく継続が必要である。課題としてフリーランスや学生アルバイトなど雇用が脆弱な層への支援を充実させる必要がある。

 
  • 意見陳述する逢見会長代行