衆議院予算委員会が開かれた委員会室
2021年2月16日の衆議院予算委員会に連合の井上久美枝総合政策推進局長(ジェンダー平等・多様性推進担当)が出席。連合「コロナ禍における雇用・生活対策本部」の取り組みの一環として設置した「コロナ禍におけるジェンダー平等課題に関する意見交換会」の議論を紹介しながら、「女性と雇用」をめぐる問題について意見陳述した。
一点目は、「女性の雇用への影響と問題の可視化」として、連合労働相談の内容等を紹介し、「国や地方自治体が無作為抽出標本を対象に全国調査を行い、女性が置かれている現状について、偏りない実態把握と問題の可視化をはかるべき。非正規雇用労働者の待遇改善に国は指導力を発揮するとともに、実効性のある施策を打ち出すべき」と述べた。
二点目は、「テレワーク」について、日本女子大学の大沢真知子教授とシカゴ大学の山口一男教授の分析による、雇用形態、企業の業種、企業の従業員規模の3つを主な要因とするテレワークの機会の男女格差に触れ、「国の『テレワーク7割』は現実を踏まえたものなのか」、「性別・雇用形態別・業種別・職種別・従業員規模別に実施状況を調査・分析し、実態に合っているのか検証すべき」などと投げかけた。
また、テレワークの場合は事業主が用意すべき労働の場を提供させられているとして、「事業主が対策を講ずるべき課題を労働者個人に負わせることがないよう、責任の明確化をはかるべき」と訴えた。
さらに、東洋大学の村尾祐美子准教授の分析で、テレワークする女性は通常時よりも増大した家事・育児等をより偏った形で担っている実態が明らかとなっていることを紹介し、「テレワーク下でも保育サービス等を十分に供給するとともに、男性の育児・家事等への参入や長時間労働防止を促進すべき」と述べた。
三点目は、「一人ひとりに確実に行き届く支援」として、「特別給付金をめぐって、同居の被害者に『被害の自覚』が生まれた」という社会的包摂サポートセンターの遠藤智子事務局長の話を紹介し、「今後のために、特別定額給付金の給付対象者の性別ごとの受給状況を調査・検証し、世帯主基準を見直すべき」と提起した。
四点目は、「雇用の創出」について、「雇用を失った人たちを公共部門で積極的に採用する、あるいは直接的な支援を行うNPO等民間団体への財政的措置を行うことにより、国として雇用創出に努めるべき」と訴えた。
最後に、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による差別発言に触れ、「日本は女性差別がある国だと世界に発信してしまった。トップの交代で済む話ではない。オリンピック憲章はもとより、ILO第111号条約(雇用及び職業についての差別待遇に関する条約)に反するものであり、日本が中核条約を批准していないことが、あのような発言が出る背景にある。日本があらゆる差別を許さない国であることを国際社会に示すためにも、直ちに批准するという声明を出すべき」と強調した。
その後、立憲民主党の逢坂誠二議員や国民民主党の西岡秀子議員をはじめ与野党の議員と質疑応答を行う中で、ILO第190号条約(「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約)にも触れ、「ハラスメントを許さない職場環境、社会をつくっていくことでジェンダー平等を実現することが重要だ」と訴えた。
以 上