連合ニュース 2021年

 
2021年01月28日
経団連と連合との懇談会を開催
-コロナ禍を克服し、誰もが希望を持てる社会に向け、賃上げなど環境整備を主張-
懇談会全景
 連合は1月27日、経団連との懇談会を都内で開催し、「春季労使交渉をめぐる諸問題について」をテーマに意見交換を行いました。
 
 冒頭、中西経団連会長、神津連合会長の順にあいさつしました。
 このなかで中西会長は、「緊急事態宣言により、経済活動全般に大きな影響が生じているが、やるべきことは変わっておらず、感染対策を徹底しつつ、経済の改革に取り組まなければならない。公表した2021年版経労委報告は、副題を『エンゲージメントを高めてウィズコロナ時代を乗り越え、Society5.0の実現を目指す』とした。しかし、経営者だけが旗を振っても改革は前に進まない。経営者と働く人との関係が非常に大事であり、働く人が前向きな気持ちになり、『エンゲージメント』を高めることが必要である。マスコミが注目するのは一斉賃上げの成否ばかりだが、そのバックボーンとなるのは、労使が世の中の変化をしっかりと捉え、働きがい・働きやすさを実感できる職場づくりをおこなうことである。経労委報告をつくる過程において、日本の賃金水準がOECDでも相当下位になってしまっていることを、あらためて認識した。政府から賃上げのモメンタムを維持してほしいと言われる前から、大きな危機感を持っている。低位にある生産性の問題も含め、春季交渉でそれらすべてが解決するわけではないが、労使の真摯な話し合いをいろいろなかたちで展開していきたい」と述べました。
 
 神津会長は、「コロナ禍における危機克服は焦眉の急である。立場の弱い方々や雇用形態が不安定な方々に影響が集中し、各種の特例措置も十分に利用されていないことなど、様々な課題がある。経団連として企業社会全体に対する指導を是非、強めていただきたい。雇用のセーフティネットの枠組みを、政府の責任と労使のリーダーシップのもとで、パッケージとして構築する必要性がいっそう高まっている。コロナ禍に陥る以前から、わが国は危機的状況にあった。20年来のデフレ的な経済基調、そのもとでの少子化・人口減少である。格差拡大・平均賃金下落が継続した結果、先進諸国の賃金はわが国の1.5倍前後になっている。2014年以来、政労使での心合わせのもと、経団連会員企業や連合傘下の労働組合では、ある程度、賃上げを実現してきたものの、いまだ十分に広がっていない。経団連でも『賃金引き上げのモメンタム維持』を明確にされているが、もっと社会全体で共有していくことが不可欠である。賃上げや分配構造の転換ができうる企業が消極策にとどまれば、わが国は『合成の誤謬』に陥り、さらに不毛の数十年を余儀なくされる。今後、各々がさらなる世論喚起に努めていこうということを申し上げたい」と述べました。
 
 その後の意見交換において、連合側からは、企業規模間格差の是正、女性の雇用・働き方に関する課題、重層的なセーフティネット構築の重要性、運輸・観光産業の現状と課題、いわゆるエッセンシャルワーカーの待遇改善の必要性、雇用形態間格差の是正、「ジョブ型」雇用に対する考え方などについて提起されました。
経団連側からは、労使が議論を尽くして企業が賃金を決定する「賃金決定の大原則」堅持の重要性、新たなコンセプトによる労働時間法制検討の必要性、セーフティネット構築と必要な財源も含めた論点整理の必要性、危機克服のためのボトムアップ型経営実現に向けた思い、地方・中小企業の活性化に向けた視点、環境変化に対応した産業ごとの総合的な政策展開の必要性などについて意見が挙げられました。
 
 まとめのあいさつで神津会長は、「大変貴重な意見交換ができた。日頃からの労使間の切磋琢磨の重要性を再認識した。特徴的だった議論のひとつに、雇用のセーフティネットに関し、前向きな意見交換ができたことが挙げられる。今後の日本社会において大変重要なテーマであり、足元の危機感をバネに、ぜひ具現化していきたい。その他の課題についても本質的な議論ができたと認識している。メディアの取り上げ方は、やや一面的になりがちであるが、各々の問題意識を粘り強く発信していくことが大事である。感染症対策も含めて、健康第一でこの状況を乗り越えよう」と述べました。

 中西会長は、「労使の問題意識はかなり共通点がある。難しい課題が多いが、女性の雇用問題や同一労働同一賃金など、必死で取り組まなければならない」、「日本流のしっかりとした社会をつくることをめざすうえで、そのための題材としても春季交渉は大変重要な意味を持つ。これからもタッグを組みながらよろしくお願いしたい」と述べ、懇談会は閉会しました。
 
以 上
  • 神津会長挨拶
  • 中西会長挨拶