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賃上げの方法と用語解説


このコーナーの目次


春季生活闘争のデータでよく使われる用語を解説します。

「加重平均」と「単純平均」の違いは何ですか?

 「単純平均」は、各組合の賃上げ額を単純に足して平均値を集計する方法で、「一組合あたりの」賃上げ額の平均がわかります。
 一方、「加重平均」とは、賃上げの影響を受ける組合員の数を計算に反映させ、実際の賃上げ額の平均を算出する方法で、「組合員一人あたりの」賃上げ額の平均がわかります。金額ごとに人数をかけることを統計学で、加重(ウエイト)というため、このような呼び方をします。

 具体的な計算方法を見てみるとわかりやすいでしょう。
いまA、Bの2つの組合があります。それぞれ賃上げ額と組合員の数が次のとおりだったとします。

  • 組合A
    • 賃上げ額:20,000円
    • 組合員:70人
  • 組合B
    • 賃上げ額:10,000円
    • 組合員:30人

すると、単純平均と加重平均は次の値になります。

  • 単純平均=(20,000+10,000)÷2=15,000円
  • 加重平均=(20,000×70+10,000×30)÷100=17,000円

「平均賃金」と「個別賃金」の違いは何ですか?

 平均賃金とは、一人ひとりの賃金の合計額を人員で除したものをいいます。個別賃金とは、高卒35歳勤続17年生産職というように労働(力)の銘柄を特定したときの賃金水準をいいます。平均賃金は、賃金の労務コストの側面を色濃く反映する指標であり、個別賃金は、労働(力)の質を考慮して賃金比較をする際に有効な指標です。平均賃金と個別賃金のどちらで賃金水準を比較するかによって、比較結果は異なります。一人ひとりの賃金水準の社会的な位置を確認するためには、個別賃金による比較が欠かせません。

「ベースアップ」と「定期昇給」の違いは何ですか?

 ベースアップとは、個別賃金水準を引き上げることです。簡単にいえば、賃金表の書き換えです。一方、定期昇給とは、前任者(先輩)に追いつくために必要な個人別の賃金の上昇のことをいいます。簡単にいえば、賃金表上の移動です。例えば、34歳の人の賃上げは、34→35歳の定期昇給+35歳のベースアップとなります。定期昇給が制度化されていない場合、定期昇給に相当する部分を交渉で確保しなければ、個別賃金水準が低下することになります。

「平均賃上げ方式」とは何ですか?

 組合員の平均賃金をいくら引き上げるか、つまり一人平均の労務コストをもとに交渉する要求方式です。一人ひとりの新賃金は、賃上げ妥結後に行われる賃上げ配分によって決まります。わが国では長くこの方式が賃上げ要求の主流でした。
 また、この平均賃上げ要求の多くが、定昇込みで行われてきました。単組ごとに異なる定期昇給分を込みにしているため、定昇制度がない組合でも要求をつくりやすい反面、どんぶり勘定的にならざるを得ないという欠点があります。賃上げ回答が低迷するなかで、着実なベースアップ分の獲得が求められています。

「個別賃金方式」とは何ですか?

 銘柄を特定した個別賃金水準の改訂について交渉する要求方式です。産業別・職種別労働組合からなる欧米では、この方式によって賃金交渉が行われています。この方式では、個別賃金をまず決定し、その結果として平均賃金が算出されるという関係になります。新卒直入社者の標準を要求する標準労働者方式、職種とその熟練を基準に、あるいは特定の資格を基準に要求をする職種別一人前方式などがあります。
 同一年齢ポイントの純ベアを要求するA方式と1歳前からの定昇込みで要求するB方式があります。

なぜ「定昇相当分」と「純ベア」を区分けするのですか?

 純ベア分と定期昇給相当分を区分けする理由の一つは、まず「定期昇給」についてしっかり交渉するためです。定期昇給に代表される賃金カーブの維持は、経営責任として行うべきことであり、その職場のルールを守ることなのだということをきちんと主張するために、「定昇相当分」を明確にしていく必要があるのです。

 もう一つの理由は、「純ベア」交渉を有利に進めるためです。労働組合は、組合員のがんばりを認めることや、適正な業績の配分を要求します。それに対応するのが「純ベア」であり、それを明確にすることによって交渉力を強められるのです。

よく聞く言葉ですが「賃金カーブ」とは何のことですか?

 職場の仲間の年齢や勤続年数はまちまちですが、みんなの賃金を年齢や勤続年数の順に並べてみます。すると、年齢や勤続年数が増えるにつれて賃金も上がっていき、ほぼ右肩上がりの曲線が描かれます。この、賃金の上昇ぐあいをあらわす曲線のことを「賃金カーブ」といいます。

 賃金カーブは、年齢と勤続年数にともなって、仕事のスキルが上がる一方、子供の教育費なども含め生活費が上昇することに対応しているもので、一般に年功カーブともいわれています。

 この背景には、スキルアップと生活の変化に対応しながら、長期的な雇用関係全体を通じて賃金を支払うという日本的なスタイルがあります。

 働く側にとっては、安心して将来の生活設計をもつことができ、経営サイドにとっても、安定的な人材確保と企業内教育を通じた労働生産性の向上が図れるという、双方のメリットがこうした仕組みを支えてきたと考えられます。

 賃金制度の整備が進んでいるところでは、定期昇給制度などにより賃金カーブを維持することがほぼ制度化されてます。しかし、そうした組合は少数派です。労働省の調査では、中小企業の約半数のところでは賃金表がないと答えています。その場合、賃金カーブを維持するには、毎年の賃上げ交渉のなかでカーブ維持に必要な昇給分を確保しなければなりません。

 どんな賃金制度になったとしても、家族を含めた生活費を補填するだけの賃金水準は確保される必要がありますので、賃金制度の見直しの動きのなかでも、賃金カーブの意義は基本的には変わっていないのです。


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